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ふーふーはうふー


「たうったう」


「……たうったう」


「あ、終わりらへんが若干違いますー。ぷりーずリピートあふた……? 英語わかんないからいいや……たうったう」


「たうったう」


「たうったううるさいんだが……」


 みかんは三日連続で夕飯を食べにきた。いやそれはいいしすごく嬉しいんだけど。万実音ちゃんから「たうったう」の発音について学び、本家の発音を習得した花凛は、なぜかそれをみかんにまで伝授し始めた。


「みかんまでたうったうって呼ぶのかよ……」


「呼びませんわ。私が将来凛太と結婚した時に呼んでもらうのですわ。そのためには自分も正しい発音を知っておかないとですわ」


「……」


 先のことまで見通しすぎて言葉が出ない。


「あ、たうっお兄ちゃんたう顔赤い! あ、みかん顔ピンク!」


 花凛がはやし立てる。結婚とかみかんが言うから気づかないうちにそうなっていたのかもしれない。


 顔がピンクになっているみかんは言ってみれば、見た目が桃のみかん。みかんの見た目をした桃味ケーキと正反対だ。


 自分で言って恥ずかしくなってしまったみかんはふーふーはうふーと息を整えて落ち着くと、


「と、とりあえず、料理部の味見にはいつでも協力しますわ。どんな独創的なメニュでもたくさん食べますわ」


「私もー味見するよーたうっお兄ちゃんたう……もう疲れたからお兄ちゃんに戻そうかな……」


「いいと思うぞ……というか戻してほしい……」




 そして、三十分後。みかんと花凛が一緒に作ると言ってきたので、僕はみかんと花凛とカレーを作っていた。みんなで作るものといえばきっとカレー。


 花凛もみかんも料理は普通にできるので順調に進む。


「私家から桃取ってきますわ」


 煮込む前になってみかんが言った。


「もも?」


「結構美味しいですわ。余ったらデザートですわ」


「おお……やってみるか」


 僕は頭の中で料理部のメニューの桃チャーハンを桃カレーに訂正する。多分20倍くらいましになった。



 みかんが桃を取りに行っている間に僕は桃カレーを検索してみる。

 お、結構出てくる。つまりそれなりにまともで美味しいってことだろう。




 そういうわけで期待が僕の中で高まった状態で出来上がった桃カレーは……


「おお……桃が……そう、例えばお子様ランチのハンバーグのケチャップのように味を引き立てていて……いやそれとは違うか……とりあえず美味しい……」


 やった! これで一つ料理部のメニューの中にまともなのができたぞ。


 僕は喜びのあまり早速スマホで萌門さんに連絡をした。


 瞬時に返事が来たのだが、予想と反応が違った。


『甘いよ田植ちゃん! だってそれじゃあ、意外性が薄れるよ。やっぱり桃チャーハンだよ』


『そこまで意外性が大切か……』


『そうだよ田植ちゃん! 意外性をなくすのならいっそのこと三愛みたいにまるごと桃みたいにしなきゃダメだよ』


『まるごとね……それって思うんだけど料理……?』


『料理だよ。お皿に乗せるし』


 あ、そうですか。


「凛太、食事中にスマホは行儀が悪いですわ。すぐやめないと、ほっぺについているごはんつぶを私が食べちゃいますわ」


「わかったやめる」


 僕はスマホを置いた。もう桃チャーハンでもなんでもいいや、美味しければいい。そう、美味しくつくればいいんだ。


「というか……ごはんつぶ、ついてるのか……?」


「ついてませんわ。だから私がつけますわ」


 みかんがごはんつぶを僕につけようと手を伸ばしてくる。


 絶対こっちの方が行儀悪い……。



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