ハーレムルート Extra if
「たっだいま~」
俺は家の扉から元気よく居間へと入っていった。やっぱり帰ったら先ずは牛乳だな!
俺は冷蔵庫から牛乳を取り出すと、そのまま直飲みで一気に飲み干した。
「おかえりヒロ……」
二階から降りてきた姉ちゃんは、何だか酷く落ち込んだ様子だ。
「どうしたの姉ちゃん?」
「うっ、うう……」
何と姉ちゃんはそのまま泣き崩れてしまったではないか。
俺は慌てて駆け寄り姉ちゃんの肩に手を置いた。
「どうしたんだ姉ちゃん!?」
「うっ……。実は……ヒロが……」
―――ガチャ
「どうも~」
「先輩おじゃまします」
「失礼致します」
姉ちゃんが泣きじゃくる中、いきなり現れた茜、歩美、ゆかりの三人。何やらご機嫌のようだ。
「待ってくれ! 待ってくれー!!」
姉ちゃんは3人を見るなりわめき散らす様に騒ぎ出した。
「どうした姉ちゃん!! 落ち着け!」
「おほん……いいかなヒロ君?」
こちらの事などお構いなしに、茜が話し始めた。よく見ると茜の鼻の下には何とも逞しいカイゼル髭が蓄えられている。
「茜……それは何だ? 何の冗談だ?」
俺は思わず笑い出しそうになる。至って真面目な顔をした残りの二人が更に笑いを誘っている。
「冗談では無いのだよヒロ君。君はね……『ヤンデレ特別法案』の対象者なのだよ!」
―――はぁ?
何をアホな事を言っているんだ?
ヤンデレ特別法案? おいおい今日はエイプリルフールか何かか?
まるで信じられないと言わんばかりの俺に、茜は黙って居間のテレビの電源を入れた。
「たった今! たった今可決されました『ヤンデレ特別法案』について一言! 一言お願いします!」
テレビの向こうで、見慣れた首相がマスコミにマイクを向けられ揉みくちゃにされていた。
慌ててチャンネルを変えるが、どこのテレビ局も『ヤンデレ特別法案』の特集ばかり! 唯一テレ東がムーミンの再放送をしているくらいだ。
「な、何だ……これは?」
「信じて貰えたかな?」
泣き崩れる姉ちゃん。凛々しい顔の茜。真面目な顔の歩美とゆかり。俺は何が何のことやらさっぱりだった。
「浮世離れのヒロ君の為に説明しよう。ヤンデレ特別法案とは、好きな男の人が複数の間で被った場合に、お互いが所有権を主張できる素晴らしい法案だ」
―――?
「つまり、ここに居る我々全員がヒロ君の所有権を主張しているんだ」
茜の説明を聞いてもピンと来ない俺。
だから何だと言うんだ?
「ヒロ! 逃げろ!!」
姉ちゃんの悲痛な叫び。しかし俺はその前に歩美とゆかりに取り押さえられてしまった。
「……しかしお互いに所有権を主張してもヒロ君は1人しか居ない。そこで…………」
茜はどこからともなく鉈を取り出していた。
「お互いに均等に分ける事を『ヤンデレ特別法案』で定めたのだよ!」
鉈にはべっとりと血の跡が着いており、既に何かをバラしたかの様な凄惨な光景が俺の目に浮かんだ。
「……待てよ俺死ぬのか!?」
「大丈夫♪ちゃんと愛してあげるから……」
茜の鉈を持つ手に力が入る。
「止めてくれ!!」
「頼む!! 止めてくれーー!!」
「ギャーーーー!!!!」
―――ふふふ。綺麗に半分こ♪
「ほら、お姉さんの分」
綺麗な右足と頭皮の一部をお姉さんの足下に置き、私は左腕とお腹の一部を抱え、満足した顔で去ることにする……。




