新学期。いつも通り平和な毎日です。
「よう!また同じクラスだな」
「ああ、宜しくな」
高1の時に知り合った友達『島貫』と喜びの挨拶を交わし、俺は決められた席へと着いた。
カバンを開けると、見覚えの無いどら焼き(半分)が出て来た。いつの食べかけなのか見当も付かない……。
「お、旨そうじゃん。くれよ」
島貫が食いついた。
「ああ、いいぜ」
俺は特に気にせず島貫にあげることにした。
新しい担任はオバサンで、俺達のやる気は一気に地下を突き抜け帰ってから何しようかと考え始めた……。
「なあ、変わったオッサンだな。頭にヤキソバ乗ってるぜ!」
……すまん島貫。そいつはどら焼きの効果だ。たった今思い出したぜ。
<茜は!?我が愛娘の茜はどこだ!?>
<どうやら同じクラスじゃなかった様だなwww>
うむ、茜と同じクラスじゃない事は素直に喜ばしい。アイツがいると正直授業所じゃ無いからな。
「俺的には夫婦漫才が見られないのが残念だぞ」
「うおっ!島貫、俺の心を読むな」
「けけ、今ごろ茜の奴机でも齧ってるんじゃないか?」
「アイツは外面だけは良いからな……」
「そうだ!今日は午前中で終わるから、帰りにどっか行こうぜ?」
「そうだな、マッグでもするか」
俺と島貫は学校帰りに近所のマッグへとやってきた。基本的に俺達は帰宅部なので、毎日暇を弄んではブラブラと街を練り歩いて部活動に勤しんでいる。
「マッグポーク単品で3つ下さい」
「俺はテラマッグのセットに飲み物をコーラ、氷抜きでオナシャス。あ、スマイルも特盛りで!」
「ヒロよ、相変わらず注文がしけてるな」
「仕方無いだろ、小遣いが少ないんだからよ」
俺達は店の一番奥の席へと座ると、特にとりとめの無い話で盛り上がる。これも部活の一環だ。
「あ、先輩」
声を掛けてきたのは歩美だった。トレイにハンバーガーとポテトを乗せ、隣の席へと座った。
「よう」
「歩美ちゃんこんにちは♪制服似合ってるね!」
「ありがとうございます島貫先輩」
後からクラスメイトの女子が1人、隣の席へとやってきた。
「早速友達が出来たみたいだな。良かったな」
「2人とも可愛いね」
隣の席に気を取られ、俺達の話は半分上の空に――――
「うっ!!」
「ん?どした島貫……」
島貫の様子が変だ。しきりに下腹部を押さえている。
「いや、何だか腹の具合がだな……すまんちょいと花を摘んでくるぜ!」
「ほいよ~」
しかし、10分しても島貫が戻る気配が無い。
――――ピロン!
俺のスマホに島貫から連絡が入った。
『スマン、一世一代の大ピンチだ。助けてくれ』
一体島貫のやつは何をしてるんだか……。俺は残ったハンバーガーを口に入れ、トイレへと向かった。
「おい、どうした?」
「すまん、こっち来てくれ」
個室の隙間から手を振る島貫。俺が中へ入ると、そこには下半身丸出しの島貫が居た。
「悪い、そっちの趣味は無いんだが……」
俺は慌てて外へ出ようとする。
「ま、待て!違うんだよく見てくれ!」
「見たくないわ!!」
と、言いつつ島貫の暴れん坊将軍をよく見ると、何と腹にめり込む形でギンギンのギンギンにいきり立っていた……。
<OH!!ファンタスティック!!>
<フランクフルトかよ!!>
「うわ~…………で?」
「いくら力入れてもビクともしねぇからトイレが出来ねぇんだよ!頼むから一緒に押してくれ!」
「……ちょっと待ってろ、今閃いた」
俺は席へと戻り、歩美に声を掛けた。
「貰ったどら焼きで島貫が大変な事になった。何とかならんか?」
歩美のクラスメイトが首を傾げる中、歩美は笑いながら返事をした。
「ごめんなさい、無理です」
哀れ島貫……。俺は島貫のコーラを一気に飲み干すと、容器を持ってトイレへと向かった。
「どうだ、何とかなりそうか!?」
「ストローを刺すのはどうだ?」
俺は島貫にストローを手渡した。覚悟を決めた島貫がストローを暴れん坊将軍へと向かわせる。
「いででででで!!無理!無理!」
島貫はストローを投げ捨てた。
「じゃあこっちだ」
俺はコーラが入っていた紙コップを手渡した。
「……これをどうするんだ?」
「逆立ちしてこれに入れてくれ。俺がコップを押さえててやるからさ」
島貫の顔が冷めていくのが分かる。
「親にすら見せたこと無いプレイをやるのか……?」
(待て、お前は親にプレイを見せるのか?と言う突っ込みは置いておこう……)
覚悟を決めた島貫がトイレの個室で逆立ちをした。俺は紙コップをあてがい、島貫の聖水を待つ。
「……何だか出しづらいな」
「……………………」
俺は目を瞑り、何も考えずに島貫の聖水を受け止めた。
2人で席に座ると、歩美は1人で隣りに座っていた。どうやらクラスメイトはもう帰ったらしい。
「どうしました島貫先輩?」
「いや、何でもない、な!」
「あ、ああ……」
島貫が慌てた様子で首を横に振る。すまん島貫。全ての元凶は歩美だ……。




