ただの姉として……
ヤンデレは女性だから成立する物であって、男がやるとただのストーカーになる。そしてキモい……。
最近ヒロがトラブルに巻き込まれる事が増えた。
最初は気に留めなかったがあまりに多すぎるので、私はあの日以来止めていた私の愛を再び動かした。
しかし、聞こえてくるのは至って普通のトラブルで、ヒロは単純にとても困っている様子だった。最近はクソビッチも陰湿メンヘラもヒロの事は諦めた様でヒロと接触している様子もない。となると……。
私は仕方なく奴を頼ることにした。
こっちに帰って来てればいいが……。
今まで無理難題をお願いしてきたが、そろそろ限界だろう。
会社の大金を着服したかつての後輩。小額を複数回に分けて持ち出していた所を私が偶然にも帳簿の改竄に気が付いた。
しかし、私はそれを告発せず自らの利益になる様に取って置いたのだ。奴は着服した金で何でも屋を始めた。そこに私はつけ込んだのだ―――
―――プルルル……ガチャ
「…………へい」
「スマン、本当に最後だ。金も出す」
「…………何でしょ」
「最近の二条ゆかりについて調べて欲しい」
「軽く調べるだけですぜ? 3日下さいな」
―――ガチャ
私は二条ゆかりと言う人物を信用してはいない。何故なら、ヒロに纏わり付く人間は漏れなく何かあるクセモノばかりだからだ……。
程なくして、二条ゆかりに関する調査書が送られてきた。
「やはり……」
そこにはヒロに対する二条ゆかりの陰湿な仕打ちの数々が書かれていた! これは姉として普通に許せない事だ。
「何とかしなければ……」
私は何とかしてヒロに気付かせようと考えたが、ヒロが奴を信じている以上説得は通じない。何か決定的な証拠を、それもヒロが信じてくれそうな位に明らかな物的証拠を私が見つけなくては―――!!
私はそれから暫く二条ゆかりを見張った。
学校には入れないので、何とかして盗聴器を二条ゆかりに仕掛けようと接触を試みたが、どれも失敗に終わった……。
そして私を嘲笑うかのように、ヒロは次々とトラブルに巻き込まれていく。
「ヒロ、最近変だぞ? 少し学校を休んだらどうだ?」
「……大丈夫だよ。大したことは無いから」
どんなに心配しようが、ヒロは全く気に止めず今日もトラブルに巻き込まれていく。私はヒロの為に何とかしてアイツを止めなくてはと思うが決定的な証拠を掴めないまま、虚しく時間だけが過ぎていく……。
そんなある日、私の下に一通の封筒が届いた。宛名、差出人共に不明。普通の茶封筒に切手も貼られず、直接ポストに投函されたと思われる。
全くと言って良いほどに良い手紙な気がしないが、それでも仕方なく開ける。一応中に硬い物が入っていないか触ってみたが、紙切れ一枚しか入っていないようだ。
溜息一つをついて、私は茶封筒から一枚の便箋を取り出し広げた……。
『弟は預かった。返して欲しければ指定の場所へ来られたし』
ドラマでよく見る新聞の切り抜きの文字を使った短い一文だ。
私に迷いは無い! 軽い支度を済ませ、足早に指定の場所へと向かった!!
恐らくは奴だろう……。それ以外に考えられない。
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