ついに卒業しました! やったね!
これからは壊れていく一方です。
それから私は暫く退屈な日々を送る事になる。
獲物を独り占めしたは良いが、あの女達の牙が抜け落ちてしまったのは予想外だった。苦労して得た獲物自体にそこまで興味が在るわけでもない。直ぐにでも捨ててしまっても構わないが、何かが腑に落ちない。
茜は汐らしく、歩美は何やら記憶が無くなってしまった様だ。姉も大人しくなり以前の覇気が見られない。とてもつまらない日常に戻ってしまった…………。
それでも私は何故かあの人と一緒に居た。そこだけは何故だか自分でも分からない。しかしこのままでは退屈で死にそうだ。
―――そうだ。今度はあの人を壊してしまおう……。
「ゆかり、一緒に帰ろう」
「ごめんなさい。今日は用事があるの」
私はワザと嘘を付いた。
貴方の顔がみるみる寂しそうになるのが手に取るように分かるわ。ふふ、気になるかしら?
別に何だって良いのにすっかり私を占有した気になってるのは男のワルイ所よね♪
「先輩♪」
それから私は学校でイケメンと噂の三年生に声を掛けた。少し悪い噂もあるワイルドなタイプの人だ。
「これ、落としましたよ」
予めくすねておいた私物を手渡し、私はそそくさとその場を後にした。
そしてあらゆる手を使い、何日も掛けて三年生の先輩を私に惚れさせる。そして―――
「ゆかり、俺と付き合わないか?」
―――時が来た。
先輩から告白された私の視線の先には、当然の如く貴方が居る。
「ちょっ! 先輩、ゆかりは俺と付き合って―――」
「はぁ!? テメエ殺すぞ!!」
貴方の顔に鋭いパンチが当たる。
情け無く抜き飛ばされた貴方は咄嗟に起き上がるも状況を理解しきれずに混乱しているようだ。しかしその拳は追撃の嵐となり、貴方の顔は見る見るうちに酷く歪んでいく。
ねぇ……あんまり早く壊れないでね♡
私は心の中で甘いお願いをした。
一方的な暴力に屈すること無く、貴方は懸命に私の所有権を主張し続ける。次第に疲弊したか飽きたのか、先輩は貴方の顔に唾を吐きかけ何処かへと去って行った。
「大丈夫!?」
私が駆け寄ると、貴方の顔は見るも無惨な事になっており、ぱっと見別人の様になっていた。目は晴れ上がり唇は切れて血が流れている。
「ゆかりこそ大丈夫だったか……!? あの先輩良い噂を聞かないから気を付けろよ……」
自分の心配より私の心配。そんな貴方を壊したくて壊したくて。次は何をしようか考えるだけで楽しくて愉しくて―――
それから私はあらゆる手段で貴方を苦しめた。
女子の体操服を貴方の鞄に入れて、持ち物検査で見付かった時は傑作だったわ。
進路指導室で説教されている貴方を見ているだけで濡れてしまう位にね!
痴漢の冤罪もやってみたわ。これはイマイチだったわ。
手に付いた繊維検査と、相手の衣服に貴方の皮膚の付着が無いか調べたらすぐに冤罪だって分かってしまったから……。変な所で頭がキレるのね。
ポケットにスズメバチも良かったわね。腫れ上がった顔が最高に不細工だったわ~♪
あまりに気持ち悪いから二度とキスしてやらないわ……。
生意気にまたバイトを始めたから、匿名で苦情を入れてやったわ。店長に怒られて泣いてる様も最高に最低ね。三件くらいクビになったかしら?
でもね……やっぱり飽きてきちゃった♪
そろそろ壊れてもらうわ
 




