長く苦しい悲しみの果てに
今、俺の手には赤と黄の薬が握られている。
見た目はどちらも変わらず、歩美ちゃんが白状しない以上俺がどっちか飲むしか無い。……もう一度歩美ちゃんに飲ませるのは……止めておこう。
さて、俺はこっそりと茜の部屋へと侵入した。
前回、外からでも窓が開くように細工したからな。外から入る際に見られなければ問題は無い。
俺は眠る茜の目の前で黄色のカプセルを飲み込んだ。
……
…………
………………
……うっ!!
俺は酷い吐き気と頭痛に襲われた!!
「……うごぉ……………!」
初めて訪れる死の予感! それぐらいに意識が自分の外へ向かっているのが感じられた!
俺は最後の力を振り絞り歪む視界の中、何とか茜の口に赤いカプセルを入れ……力尽きた。
―――私は気が付くと自室のベッドにいた。
今まで酷い悪夢にうなされていたかの様に目覚めが悪い。
「……下着は……着けてる」
パジャマの下の下着をめくり、ヒロ君の康成がトンネルを抜けていないかを確認した。
ベッドから起き上がった拍子に、足下にあった何かを思い切り踏んづけてしまった!
「―――げへっ!!」
慌てて避けると、それは島貫君だった。しかも口から何か汚い薬を吐き出している……。
「おへっ! げへっ! ウォエェェェェ!!」
島貫君は私の部屋のカーペットに盛大にゲロをぶちまけた。後で弁償して欲しい。
「あか……ね…………目が、覚めたか……良かっ……た」
島貫君は今にも死にそうな顔で、私の事を気遣っている。島貫君のポケットから転がり落ちたカラフルなカプセルが事の顛末を告げていた。
「何で島貫君死にそうなの? それに、私島貫君に酷いこと言ったじゃん……。どうして?」
「茜…………俺にしとけ……」
ゲロ塗れの島貫君は酷い顔だ。とても告白をする状況では無い。カーペットは汚れたし何か酸っぱい臭いはするしで最悪……。
でも……何だろう。
どこか嬉しい気持ちの自分が居る。
「…………俺なら……お前の……全てを……受け止める……ぞ」
「バカ……島貫君、死にそうじゃん……!!」
私は止め処なく溢れ出す大粒の涙を堪えることが出来なかった―――




