夜の病院で変態覆面マスクに追われています!!
「助けてくれーー!!」
俺はオカマの様な走りでナースステーションを目指した!階段を登り3階の外科へ全力疾走で戻る!
<ヒロ君逃げるな!>
<ヒロ君逃げろ!>
「ヒロ君を殺して……私も……死ぬ!!」
とち狂った茜の表情は覆面と闇夜で分からないが、見えない方が良いだろう……。
「あった! 誰か! 助け―――」
ナースステーションに入った俺は一瞬で全てを理解した。
床に倒れ動けなくなっている看護師や先生。
今、この病院は茜に占拠されたのだ!!
「ぐふふ! 病院の至る所にうどんの煮汁を撒いたのよ……一晩は動けないから安心して!!」
「なんと恐ろしい事を…………」
茜の料理に耐性の無い一般人は、放散した煮汁成分で意識を失ったのだろう。一応生きてはいるようだ……。
茜は俺のすぐ後ろで鉈を舐め、獲物を狙う目で俺のコマンドーを見ていた。
「ねぇ……本当はヒロ君を殺したくないの。だから私だけを見ていて欲しいな♡」
覆面マスクから垂れるヨダレが恐ろしく恐ろしい……。
「……分かった…………どうすればいい?」
俺は取り敢えず時間を稼ぐことにした。
「あは♪ まずはそのギンギンのマッチョドラゴンを手でしてあげる♡」
「折れてるから触ったら死にそうだな……」
「大丈夫♪ 死ぬ前に気持ち良く天国にイかせてあげる♡」
どっちにしても死ぬんかい! とツッコミを心の中で入れながら俺は後ろへジリジリと下がっていく。
「さあ、ギプスを取って…………」
茜の鉈が振り上げた。
「茜さん……? 落ち着いて―――危ねぇ!!」
ビュン! と風邪切り音と共に茜の鉈が水平に薙いだ!
俺は思わず仰け反ったが特大ギプスが躱しきれず、弾頭部分が切り落とされた。
「ちっ!」
今舌打ちしたぞ!? 最初から殺す気だ!
サナギの蓋が開いた中では、俺の可愛い芋虫が怯えていた。
俺はギプスを外し茜に投げつけた!
茜はそれを鉈で切り落とす!
俺は手当たり次第に手に取れる物を茜に投げつけた!
「往生際が悪いよヒロ君!?」
「うるせぇ! 俺はゆかりが好きなんだ!」
―――あれ? ゆかり? あ、今の今まで忘れてた!
何故今まで忘れてたんだ!?
「やっぱりあの女がヒロ君をたらし込んだのね!!」
茜は覆面マスクを放り投げ、ようやく素顔を現した。
鉈を光らせ、ジリジリと俺へ歩み寄る……。
俺は一歩後退りし、反対側から逃げようと機を計っていた。
「もう逃がさない……ヒロ君、ココで結ばれようね♡」
恍惚とした顔で俺を見る茜には、もう俺の言葉は通じないのだろう…………。
「止めろ!! 頼むから止めてくれ!!」
「だ~め♪」
「待て茜!!!!」
ナースステーションの入口から響く大きな声。俺と茜が目をやると、そこには包帯グルグルの島貫が居た!
「あら♪ 島貫君も居たんだっけ?」
「島貫君! 助けてくれ!!」
俺は思わぬ救世主に、最後の望みをかけた。
「茜! 頼むからもう止めろ!」
「……島貫君。ヒロ君を押さえなさい。そうすれば後で一回くらいは手でしてあげるわよ?」
茜はペットのリードを握る主人の様な目で島貫へ卑劣な交渉を持ち掛ける!
「えっ!? 島貫!?」
「いつもジロジロと私の事を見てるのバレバレよ……気持ち悪い」
「……………………」
島貫は俯いたまま微動だにしなかった。
そして、島貫の出した答えは―――
 




