わたしは 海原くるみ
自分の部屋に全裸の私。そしてセクシービデオ。
ヒロ君のお姉さんから渡された『海原くるみ全集』を眺めているが、中々に奥が深い……あ、そっちの意味じゃ無いよ?
「なるほど……こうやって……ああヤるのね」
女のテクを極めた海原くるみ大先輩の実演を、逐一ノートにメモしていく。恐らくこの手のDVDをまじまじと研究してノートに纏めた人物はそうそう居ないと思われる。
「へぇ~」
「うわぉ!」
「えっ!? これ入るの!?」
「うわ~気持ち良さそう!!」
「何でこの人全身金色なの!?」
「うわわわ! イッてるのに、更に!」
後半は唯の鑑賞会になっていたが、私の中にくるみ先輩を取り込もうと必死に画面に食いついた。もう気分は川原くるみだ―――
「ヒロ。一つお願いがある」
「……いいよ」
俺は500万円の借りがある以上、何も断る権利も無い。返事は一つだ。
「実はな、こないだの後輩のお見合い相手をして欲しいんだ」
「えっ!?」
<えっ!?>
<えっ!?>
オッサン達も驚きを隠せない。こないだは二日酔いでまともに顔を見れなかったらしく、とても残念がっていた。
俺はと言うと、大好きなくるみ姉さんに似ている人と言うだけで興奮して―――ムスコーが大爆発してしまいそうだった。
「って、言うか今お見合い……って言った?」
「ああ」
姉の言葉に俺は呆然とした。お見合いって何?
「明日来るから、宜しくな」
「え?え?え? 待ってくれ!」
―――バタン
部屋の扉が閉まり、俺は1人自室に取り残された。
「俺にはゆかりが居るのに……まだ告白してないけど……でもキスはしたし…………浮気は……ダメだよな」
俺は己の欲望(股間由来)に耐えながら一夜を過ごした。
―――そして翌日、俺は朝から緊張している。何故なら……目の前にくるみ姉さんそっくりな人が座っているからだ!
「え~っと、じゃ! 始めようか!?」
姉ちゃんのその喋りはお見合いのTPOに合ってるのか?
「どうも、川原くるみ と申します……」
は?
え?
おいぃ?
今、川原くるみって……言ったよね? ね?
<言った!>
<言ったぞ!>
――よし、間違いないな!
「あ、あ、あの! あの川原くるみさんですか!?」
俺は余りの事にもう一度お聞きした。まさかのご本人は無いだろう!?
「……はい♡」
キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!
「ヒロ! ヒロ!」
俺は姉ちゃんの声にハッと冷静に戻された。
「顔がイッてたぞ? 知り合いか?」
……そうか、姉ちゃんは知らないんだな?
だよな。普通は知らないわな。いやぁ、まさかくるみ姉さんが世を忍んで普通に働いていたとは……会社でバレないのかな?
でも専務の娘って言ってたしな…………絶対男性社員は気付いてるぞ? 自社で大人の営業を頑張ってるんじゃないのか?
まぁ、何でもいいか。今は目の前にあの伝説のくるみ姉さんが居ることだけが素直に嬉しいぜ!
「いやいやいや、何でも無い!」
俺は普段の数倍のキリッとした顔でくるみ姉さんを見つめた。
見れば見るほどに綺麗で……エロいなぁ♪
「うへへ……♡」
<ヒロ君のチン卒がもう転職したがってるぞ……?>
<最近の若いのはだらしねぇなぁ……>
「ふふふ♡」
憧れのくるみ姉さんの微笑みは最高の……最高だ!
<おーい! ヒロくーん!>
<あ~あ、こりゃダメだ>
俺は終始頬の肉が弛みっぱなしだった……。
 




