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水族館デートの最中ですが、正直魚どころではありません……!!

 俺は変態の如く、密着するゆかりのスメルを堪能していた。


「嗚呼……ええ匂いや…………」


 好きな女の子とはこれ程に破壊力のある生き物なのか……。俺の心はメルトダウンし、夜のチンアナゴはハリセンボンの様に膨れ上がっていた。


「綺麗な魚ですね?」

 ゆかりの無垢な笑顔に俺は心を奪われっぱなしである。


<君の方が綺麗だよ? とか言って引かれろ!!>

<月が綺麗ですね? とか言ってフラれろ!!>

 ――頼むから今日は黙っててくれ!


「綺麗だね」

 俺はこの日の為に魚の勉強をしたのだが、今全てが吹き飛んでいる……。


 色取り取りの魚の群れを堪能しつつ、俺達は早めの昼食を魚が一望できるカフェで迎えていた。


「水族館でフィッシュバーガーやお寿司って……どうなの?」


 俺は目の前で同族を食べさせる事を強要するメニューの数々に圧倒されていた。


「ふふ、少し可哀相かもしれませんね」

 流石大天使ゆかりだ。今すぐにでもハグしてぇ……!!


 …………グゥ……


 しかし、無情にも俺の腹は鳴る。


「ふふ、頂きましょうか?」

「そ、そうだね」


 俺達は泳ぐ魚を目の前にフィッシュバーガーを頬張った。



 午後になり、水族館の目玉であるイルカショーが始まる。

 何とかして良い場所を取りたかったが、既に満席で立ち見しか出来ない状況だ。


「大丈夫?見える?」

「ええ、大丈夫ですよ」


 俺とゆかりは人混みの隙間から覗くように、頭を左右に振りながらイルカショーを観る。


 しかし、俺の頭の中はイルカ所では無い。ゆかりの透き通る様な手を繋ぎたい一心でチャンスを窺っていた。邪な気持ち100%で気分は痴漢をする前の変態オヤジそのものだ!


 

「パパ、トイレ~」


 前の子ども連れが居なくなり、手すりの前まで来ることが出来た。これは千載一遇の大チャンスだ!

 手すりに掴まるゆかりの手の上から、俺はさり気なく己の手を被せた。無論汗は拭いておいた。



「あ……」


 ゆかりが俺を見る。その顔はとても儚げだ。

 ゆかりの手は冷たくスベスベしており、まるで陶器の様に滑らかで今すぐにでも抱きしめたくなる程に気持ち良かった。


 イルカの大ジャンプで会場は大盛り上がり。

 俺は笑顔ではにかみ、ゆかりを見つめた。心臓の鼓動がゆかりに聞こえてしまいそうな位にバックンバックン言っている。ヤバい、高血圧で死にそうだ……。


  ―――ギュッ……


 手すりに掴まっていたゆかりの手が翻り、俺の手を握った。

 指と指が絡み合い、俺は……今にも死にそうな位興奮していた。もうイルカは俺の目には入らない。俺の全神経はゆかりと繋がっている右手に集約されていた……。



  いける!


 俺は確信した。今日ここで、ゆかりに告白をしよう!!


 俺は逸る気持ちを落ち着かせ、ゆかりにかける言葉を紡ぎ始める。慎重に一つずつ、繊細な機織りの様に、愛の言葉を、一つずつ、紡いでゆく…………。




「イルカさん凄かったね」


 ゆかりの笑顔に俺は現実へと引き戻された。俺は愛の言葉に夢中になりすぎてイルカショーが終わったことに気が付いていなかった。


「ちょっとお手洗い……いいかな」


 俺は名残惜しそうに離れる指先を眺め、また一つ愛の言葉を紡いだ。不器用な俺の愛で作った解れだらけの織物は、もう完成間近だ。


 後はゆかりに渡すだけ。


 無事に受け取ってくれるだろうか…………。

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