表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/74

6月は梅雨の時期。全てが湿っぽい……。

「今日も雨か…………」

 俺はクッソつまらない数学の授業を馬耳東風の如く聞き流し、ノートの隅にパラパラ漫画を書いていた。


 雨のせいでしばらく昼休みに秘密の中庭へ行けていない……。

 しばらくゆかりに会っていないだけで、俺の脳内はゆかりの事ばかり考えている。



 放課後、傘を差しながら島貫と並んで歩くもお互いの口数は少ない。

「なあ、久々にゲーセンでも行こうぜ?」

「ゲイセン?」

 上の空で話を聞いていた俺は、無意識にT-1000のモノマネを披露してしまう。


「……待て慌てるな、これは孔明の罠だ」

 俺の中の司馬懿が落ち着いて財布の兵力を確認する。が、英世くんは不在だった……。

「むむむ!」

「なにが『むむむ!』だ。金ねぇのかよ?」

 島貫は呆れた顔で溜息を漏らした。


「たまには茜や歩美ちゃんと遊んでやれよ?最近お前は昼休みも居ねえし、放課後は家に一目散だし、二人とも寂しがってたぞ?」

 ちょっと真面目な顔の島貫に、俺は何故か心の刺がチクリとした気がした…………。




 家に着くと、俺は制服のに付いた露を払い部屋へと戻る。

「……ん?」

 俺の部屋の扉が開いている。行くときは閉めたはずだが……。

「…………」

 俺は慎重に部屋へと入る…………。


 先ず目に付いたのは不自然な盛り上がりを見せたベッドだった。俺は……勢い良く掛け布団をめくった!


 ―――ドン


 俺は不意に後ろからベッドへ突き飛ばされた。

「ふふ、おかえりヒロ君♡」

 見上げた視線の先には下着姿の茜が居た……。


<おっ!!>

<茜!!>

 オッサン達の期待の声が俺にもひしひしと伝わる。


「何してるんだ!?」

 俺は慌てて起き上がろうとするが、俺の両手首を茜が上から押さえつける。


 華奢な茜の力は見掛けに寄らず怪力で、俺は一切の抵抗が出来ずに居た。

「最近相手してくれないヒロ君悪いんだよ?」

 茜の顔が俺の顔に近付いてゆく……。

「や、止めろ!」

「止めないよ?」

「頼む!止めてくれ!!」

「え~何で?私がこんなにもヒロ君を愛してるのに?」

 茜は不敵な笑みを浮かべながら俺に唇を重ねようとする。俺は顔を左右に振り最後の抵抗を見せた。


 その刹那、俺のヒマラヤ山脈に途轍もない衝撃が走った!!

「アッーーー!!」

 俺のヒマラヤ山脈が茜の左拳で握りつぶされていたのだ!!

「こんなにTNPギンギンにしといて拒否するとか何なの!?ヒロ君のTNPは腐ってるのかしら!?」

 眉間にしわを寄せる茜の顔は酷く蔑んだ目つきで暴力的な顔だ。


「いだい!いだい!いでででで!!」

 俺のグラディウスは茜の手であらぬ方向へねじ曲げられている。左曲がりとかそんなレベルでは無い!

「私とキスするか折り畳みTNPにされるか今すぐ選んでよ!!」

<スゲー脅迫だな……>

<この状況で選べるのか……?>


 俺は思わず空いた左手で、茜を突き飛ばした!

「……っっう……」

 ベッドの隅へ転がり悲痛な目で俺を見る茜。辛うじて俺のグラディウスは無事だ。


「……ヒロ君どうして? どうして私の愛に応えてくれないの!?」

 酷く独り善がりで自己満足な愛だと俺は思ったが、俺はそれに応える事は出来ない……。


 屋上で楽しげに怪しい弁当を食べる茜、歩美、島貫、俺。

 秘密の中庭で穏やかにパンを食べるゆかりと俺。

 俺の脳裏に2つの光景が交差した。




「好きな人が居るんだ……」

 そして俺は、自分で選んだ道を進むことにした…………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ