6月は梅雨の時期。全てが湿っぽい……。
「今日も雨か…………」
俺はクッソつまらない数学の授業を馬耳東風の如く聞き流し、ノートの隅にパラパラ漫画を書いていた。
雨のせいでしばらく昼休みに秘密の中庭へ行けていない……。
しばらくゆかりに会っていないだけで、俺の脳内はゆかりの事ばかり考えている。
放課後、傘を差しながら島貫と並んで歩くもお互いの口数は少ない。
「なあ、久々にゲーセンでも行こうぜ?」
「ゲイセン?」
上の空で話を聞いていた俺は、無意識にT-1000のモノマネを披露してしまう。
「……待て慌てるな、これは孔明の罠だ」
俺の中の司馬懿が落ち着いて財布の兵力を確認する。が、英世くんは不在だった……。
「むむむ!」
「なにが『むむむ!』だ。金ねぇのかよ?」
島貫は呆れた顔で溜息を漏らした。
「たまには茜や歩美ちゃんと遊んでやれよ?最近お前は昼休みも居ねえし、放課後は家に一目散だし、二人とも寂しがってたぞ?」
ちょっと真面目な顔の島貫に、俺は何故か心の刺がチクリとした気がした…………。
家に着くと、俺は制服のに付いた露を払い部屋へと戻る。
「……ん?」
俺の部屋の扉が開いている。行くときは閉めたはずだが……。
「…………」
俺は慎重に部屋へと入る…………。
先ず目に付いたのは不自然な盛り上がりを見せたベッドだった。俺は……勢い良く掛け布団をめくった!
―――ドン
俺は不意に後ろからベッドへ突き飛ばされた。
「ふふ、おかえりヒロ君♡」
見上げた視線の先には下着姿の茜が居た……。
<おっ!!>
<茜!!>
オッサン達の期待の声が俺にもひしひしと伝わる。
「何してるんだ!?」
俺は慌てて起き上がろうとするが、俺の両手首を茜が上から押さえつける。
華奢な茜の力は見掛けに寄らず怪力で、俺は一切の抵抗が出来ずに居た。
「最近相手してくれないヒロ君悪いんだよ?」
茜の顔が俺の顔に近付いてゆく……。
「や、止めろ!」
「止めないよ?」
「頼む!止めてくれ!!」
「え~何で?私がこんなにもヒロ君を愛してるのに?」
茜は不敵な笑みを浮かべながら俺に唇を重ねようとする。俺は顔を左右に振り最後の抵抗を見せた。
その刹那、俺のヒマラヤ山脈に途轍もない衝撃が走った!!
「アッーーー!!」
俺のヒマラヤ山脈が茜の左拳で握りつぶされていたのだ!!
「こんなにTNPギンギンにしといて拒否するとか何なの!?ヒロ君のTNPは腐ってるのかしら!?」
眉間にしわを寄せる茜の顔は酷く蔑んだ目つきで暴力的な顔だ。
「いだい!いだい!いでででで!!」
俺のグラディウスは茜の手であらぬ方向へねじ曲げられている。左曲がりとかそんなレベルでは無い!
「私とキスするか折り畳みTNPにされるか今すぐ選んでよ!!」
<スゲー脅迫だな……>
<この状況で選べるのか……?>
俺は思わず空いた左手で、茜を突き飛ばした!
「……っっう……」
ベッドの隅へ転がり悲痛な目で俺を見る茜。辛うじて俺のグラディウスは無事だ。
「……ヒロ君どうして? どうして私の愛に応えてくれないの!?」
酷く独り善がりで自己満足な愛だと俺は思ったが、俺はそれに応える事は出来ない……。
屋上で楽しげに怪しい弁当を食べる茜、歩美、島貫、俺。
秘密の中庭で穏やかにパンを食べるゆかりと俺。
俺の脳裏に2つの光景が交差した。
「好きな人が居るんだ……」
そして俺は、自分で選んだ道を進むことにした…………。
 




