幼馴染み2人が料理を作っています!助けて下さい!胃袋が破壊されそうです!!
「ふんふふんふ~ん♪」
台所から軽快な鼻歌混じりに何か(恐ろしくて直視出来ない)が焼ける音が聞こえてくる。七色の煙が立ち込める我が家の台所は恐らく人類が生存できる場所ではなくなった。
「歩美ちゃん、料理教えてよ」
「え……!? え!?」
歩美が二度聞き返すくらいに意外な事だったのだろう。歩美が茜に料理を教えることは大いに喜ばしい事ではあるが、何故うちでやっているのかは至極簡潔である。
「何が起きてもいい先輩の家でやりましょう!」
「ふふ、ヒロ君に出来たての手料理を振る舞っちゃうぞ♡」
こんな時、ノーと言えない日本人気質が憎たらしい。『ダメ、7時から空手の稽古があるの』ってハッキリ断れる大人になりたいものだ……。
念の為、鑑定士&毒味人も呼んである。
「もが、もがががががが…………!!」
ここへ来たときに嬉しさの余り激しく抵抗したので椅子にふん縛ってはあるが……。
「一品目出来たよ♪」
テーブルに置かれた皿の上には、タコの足の様な軟体が七色に発色しながら激しくうねっていた。
「……わぁお。 先生、鑑定お願いします」
俺は島貫の猿轡を解いた。
「ぐわぁぁぁ!!湯気が目に入ってシバシバする!!」
島貫は激しく身悶えた。
「で?」
「ベーコンを敷いた目玉焼きだ!!」
「…………」
「…………」
歩美と俺は言葉を失う。恐らくこれが目玉焼きと判る人間はこの世に島貫だけだろう。
「先輩、卵とベーコンしか使ってないんですが…………何故かこんな物に」
(大丈夫だ。歩美は悪くない)
俺は無言で頷き、覚悟を決めて島貫の口へ卵焼き?を入れた。
「うんめぇ!!!!」
島貫の左半身は痙攣し、右目で泣きながら左眼で笑っていた。
「とりあえず致死性は無いようだな……」
俺も一口食べてみる。口の中で動く軟体がおぞましく不快だ。
あ、今意識が飛んでた。脳がシャットダウンしちまったな……。
「ヒロ君どう?」
恐る恐る感想を聞く茜に、俺は口から血を垂らしながら笑顔で親指を立てた。
「そう!良かった!!」
茜は笑顔で二品目を並べ始めた。
小さな皿に乗っている、どう見ても……汁に浸かった鼠の死骸に俺は再び言葉を失った。
「ちょっと待ってくれ。今鑑定士の状態異常を治すから」
俺は島貫の口に水を流し込み頭を強く叩いた。
「ファッ!?」
「生き返った所悪いが二品目を頼むぞ」
俺は鼠の死骸を指差した。
「ロールキャベツ……だな」
「島貫先輩って何者なんですか?」
「うむ、俺が聞きたい位だ」
俺は島貫の口にロールキャベツ?を丸々1つねじ込んだ。
「熱い!!」
出来たてのロールキャベツは熱々で、島貫の口からは汁が垂れまくっていた。
島貫の口の中に、大量の蟻が這う様な感覚が襲い掛かり、喉の奥に悲鳴と絶望が押し広がる!
「あ、咥えたまま死んだぞ……」
島貫は白目を剥き動かなくなった。
俺はロールキャベツ?を半分にし、茜の口へと持って行った。
「自分で味見してみ?」
「結構上手く出来てると思うけどな~」
茜の口に生物兵器が投入された。
――――モグモグ…………バタッ!!
なんと茜は口からは泡を吐きながら倒れてしまった!
倒れた拍子にスカートから純白のパンツが見えたが、今はそれどころでは無い。
「茜!?」
俺は急いで茜を抱え上げ、口からロールキャベツを吐き出させた。
「ゲホッ!オエッ!オエーーーーッ!!」
茜はオッサン臭い嗚咽で何とか息を吹き返す。
「ヒロ君、宇宙の始まりが見えたよ……」
その後、茜は歩美に介抱されながら自宅へと戻って行った。
残された俺は、死んだままの島貫を台車へ載せ、残った手料理をタッパーに入れて島貫の家まで運びだした……。




