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【5万pv】ありあけの月 小話集【感謝申し上げます】  作者: 香居
親愛の形は様々 ──保元二年(1157)霜月

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二話




 宗寿丸を抱きしめ頭を撫でているところに、義平義兄上がいらした。


「子猫が2匹で戯れておるのか」

「宗寿丸が賢いので、褒めていたのです」

「ならば、俺も褒めてやろう」


 義兄上は膝をつかれ、私たちを一度に抱きしめられた。……また、筋肉が発達なさったようだ。


「うぅー、苦しいですー」


 かなり力を加減をしてくださっているのだが、宗寿丸は厚い筋肉の中で呻いた。


「む……すまん」


 義兄上は少ししょんぼりとなさり、腕を解いて立ち上がられた。

 同時に、私たちを片腕ずつに抱き上げられる。


 私たちは、急に視界が高くなったことに驚いた。


「ひゃあっ」

「っ」


 宗寿丸が姫のような悲鳴を上げ、私は息を詰めた。ふたりで咄嗟に掴まったものは──


「目は隠すな。前が見えん」


 楽しげな義兄上の声が、腕から響いてくる。


「申し訳ございませぬ」

「申し訳ございません……っ」


 私はハッとし、宗寿丸は慌てて、義兄上の頭から腕を外した。

 途端にぐらつく体を、太い腕にしっかりと支えられる。


「首に回せばよかろう。締めるなよ」

「そのように恐れ多いことはできかねます」

「わ、私も致しません」

「冗談だ。ほら、しっかり掴まれ」


 体を内側に傾けられ、私たちは促されるまま、頑丈な首に緩く腕を巻きつけた。



   ✽ ✽ ✽



 義兄上は、おやつの時刻だと呼びに来てくださったらしい。

 私たちを子ども抱っこしたまま、のしのしと歩かれる。足音の割に安定感があるのは、鍛練の賜物だろう。



 宗寿丸の私室から広間に向かう道中、私は御礼と抗議を同時に申し上げた。


「ありがたく存じますが、宗寿丸は繊細な子ゆえ、揶揄われるのはおやめください」

「お前は良いのか?」

「私は心の臓に毛が生えておりますゆえ」

「ほう。今度見せてもらおうか」

「わたしも、見てみたいです」


 ニヤリとしてこちらに目を向けられた義兄上。その奥に、目を輝かせてこちらを向く宗寿丸の姿が映る。


「義兄上。宗寿丸が本気にしているではありませんか」

「珍しいものは、見たくなるのが道理だろう。なぁ、宗寿丸」

「はい……!」


 こくこくと頷く宗寿丸は可愛らしいが。


「宗寿丸。今のは〝慣用句〟と言って、物の例えを現す言葉だ。私のように、心根が図太く、物事にあまり動じないことを示している」

「兄上のお心は、図太くなどありません。とても優しく、いつも私たちに心を配ってくださるではありませんか」

「例えの話だ」

「たとえでも、兄上にそのような言葉は合いません……っ」


 話しぶりに熱がこもる宗寿丸。


 こういうところが良い、ああいうところが良いと、褒め言葉を懸命に述べてくれるのは嬉しく思うが、面映ゆい。


「おい。話がずれているぞ」


 くつくつとお笑いになっている義兄上が、しばらく後に助け舟を出してくださった。



 身の置き所がなかったので、ようやく息をついたが、元凶の義兄上を見る目つきが多少鋭くなってしまったことは、仕方がないと思って頂きたい。


ブックマークと評価を頂きました。ありがとうございます。

また、お読み頂きありがとうございます。


皆様のおかげで、歴史(文芸)にて、日間72位にランクインすることができました。心より、御礼申し上げます。

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