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世界情勢1

「630円になります」


駅前の近くにあるスーパーで、レジ係の女性は夕食の材料費の代金を俺へと告げた。

 俺は二つ折りの財布から千円札をブッキラボウに抜き出してレジ横のトレーの中へ投げ出すと、レジ係の女性は軽く会釈をしてから会計を済ませ釣り銭を渡した。

 その後、俺は今日使うであろう夕食の材料をビニール袋一杯に詰め込んでスーパーを後にした。

 スーパーの出入口に設けられている両開きの自動ドアが低音混じりにガサツな機械音を上げて開く。そして片足を一歩外へ踏み出して外へと出た。

 

「はぁ……」

 

  無機質な溜め息が流れた。

 俺は、東京の大学に通う大学生だ。実家から離れて学校の僚で一人暮らしをしている。今日はというと先ほどのゲームを切り上げて今晩の材料費をスーパーで買い終えた所だ。

 アメリカがイランを空爆した後世界情勢はかなり混沌としている。表向きは核施設への先制攻撃だとされているが、世界の見万は大分違うようだ。

 だからと言って世界戦争なんて起きるわけも無い、世界が第二次世界大戦のような過ちを繰返すはずは無く。退屈な毎日の暇つぶしをゲームという仮想世界で過している。

 でも最近は思う、もし戦争が起きていたならこの退屈から抜け出せるのではないかと。愚かな頭で考えるのだ。

 空爆以降の生活も実感できる範囲で少しだけ変わった。原油価格が高騰したせいで、ガソリンの代金も当たり前の用に値を張り上げ、今ではリッターあたりの代金

  が180円を超えている、それに伴い原油を使用している加工物も二、三十円程値段を上げた。

 一人暮らしの俺としては厳しい限りだ……。いやっ厳し過ぎる!

 ガソリンがかなりの高級品になったせいで俺はバイクという相棒を捨てる羽目になった、厳密に言えば捨ててはないのだが、実家の駐輪場に雨曝しで外に放り出しているのだから捨ててあるのと何一つ変わらないさ。

 そのせいで寮から大学までの道のりも今は歩きで通っている。まあ大学三年ともなれば1年の半年が休みになっているのだから、歩きで通うのもあまり苦にはならないのだけど。

「まあ賛沢は言ってられないか」

 ガソリンなんか買っていたら生活が成り立たなくなる、機械の飯か、自分の飯かと聞かれたらやはり自分の飯が大事に決まっている!

 ガソリンなんてその内安くなるんだから、今無理をする必要なんてないさっ……。

 そんな事を考えながら俺は宿舎までの道のりをスーパーの袋を片手に持ってトボトボと歩いていた。スーパーまでの道のりは対した事は無いのだけど、一つだけ厄介な問題がある。陸橋の無い踏み切りだ!

 都心の踏み切りはこれまた厄介で、一度ケタタマシク鐘を打ち鳴らしたが最後、次に鐘を何時、休めるかわかったものじゃない。

 そんな不安を他所に案の定、俺の目の前数メートルの距離にある踏み切りは甲高い鐘の音を鳴らして、道を斜断するという意思を周囲の人へと高らかに呼びかけていた。

 良くある事。

 むろん、この距離から走って行けば間に合う。

 そして、俺は走り慣れてない両足を全速力で回した。だが、走ったのは不味かった。

  運動不慣れな俺の両足は絡み合い、夕食の材料を抱えたまま空中へと舞うと、スーパーのレジ袋同様俺は地面へとダイブした。

 体申擦り剥いた。

 そして、うつ伏せで倒れこんでいる状態から顔を上げ、踏み切りの方向を見ると既に虎縞模様の踏み切りは両腕を閉じ、俺の対岸への侵入を固く拒んでいた。

 

「兄ちゃん、大丈夫かい?」

「ええ、一応大丈夫です」

 

 親切心か、好奇心か。俺に声をかけて来たのは、同じく踏切横断を逃したタクシードライバーだ。

 

「ここの踏切長いんだよねー。ホント困っちゃうよ」

「まったくですね……」

「兄ちゃん、大学生かい?」

「そうですけど……」

「大変だねー」

「何がですか?」

「ニュースはちゃんと確認しないと、酷い目に遭うよ」

 

 話ながら起き上がると、タクシーのドライバーは安心したのか、車の窓ガラスを閉めてしまった。

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