運命の三ラウンド-5
「あとは敵の隊長機だけです、スナイパーライフルを持っているので気を付けてください」
「厄介な奴が結局残ったんやなー」
俺が作戦を提案しようとした時だ、四号機から通信が入って来た。
明らかな御見合い状態に舌を噛んだ。
「ちょっと確認してくるわ」
どうしてこの人達は……。
「ちょっと、待ってください。危険ですって!」
こういう時はいつもなら隊長が先に動くのだけど。下に転がっている銀色の弾をまだ見つめている様子だ。自分たちが作った物に見とれているのだろうか……。
それよりも今は、四号機だ。俺の静止を聞かずに進む四号機はやがてブルーチームのスタート地点前方のキューブへと辿り着いた。
確かに時間も無い、迅速に行動しなければ敵の大将は倒せないだろう。だからこそ今は慎重に行動してほしかったのに……。
「おるでー、敵さんの大将や!」
下を見回して敵リーダーの姿を確認したのだろう四号機から通信が入ってきた。
「何やってるんですか? 撃たれますよ!」
「大丈夫やって、しゃがんで、露出少なくすれば、ワイの勝ちや」
その通信を最後にスナイパーライフルの甲高い銃声が辺り一面に鳴り響いた。
銃声は演習場内のあらゆる壁に反射し、四方八方から音が反響して伝わってきた。
その音と同時にディスプレイの右上に四号機の機体番号が表示された。案の定狙撃されたのだ。その表示と音に気が付き、今まで動く気配を見せなかった隊長がやっと動き始めた。
「ぬぁーーーーーードクソがーーーーーーああぁぁっ!」
激昂した四号機の叫び声が通信で流れてきた。無理もない、あの形状のライフルじゃ直撃一発で俺達は墜ちるだろう。それに加え、こちら側は最低でも二発以上敵に弾を当てないといけない。何とも理不尽な話だ。
「一体何があったの?」
「敵リーダーに撃ち抜かれたんですよ」
「ああやっぱり……」
隊長は一言四号機に哀れみの声をかけたが、その言葉は今のこの状況には不釣り合いな物だろう。今は何よりも敵のリーダーに専念するべきだ。
「お前らの位置から、スタート地点見えとるよな?」
「えっ見えるんですか? この位置から? キューブ二つ分もあるじゃないですか。地上からじゃまるで把握できませんよ」
「お前や無い、三号機の画面や」
「ややこしいですねー」
「ちょ、おま今敵将映ったぞ!」
――そこは丁度、敵のスタート地点へ続く最後の一本道で。直角に曲がる角付近、俺は隊長の機体を見上げていた。
倒された機体のカメラは機動を止めるので多分四号機のパイロットは三号機の画面を見ていたのだろう。
俺はその通信を聞いて、すぐさま視点を通路の方向へと向きなおす……だが一歩遅かったみたいだ。
乾いた銃声と共に発射された弾丸。その重さに押される形となり後ろのキューブへ激しく叩きつけられる三号機の姿は俺の画面にマジマジと移り込む結果となった。
そして、俺の視界、前方に微かな青い敵影が映る。
自分が撃たれても大丈夫なように、キューブに体を半分以上隠し銃身だけをこちら側に向けていた。
スナイパーライフルの形状から見てオートマチックなのだろう、装填まえでの時間はそんなにかからないはず。
咄嗟の判断で逃げようと、ボタンに手をかけた、だが、一足遅かったみたいだ。本当なら四号機が通信を送った時に隠れるべきだった。
ディスプレイの画面に砂嵐が紛れ込む、そして画面が真っ暗になり、暫くして俺達を眼下に見下ろす隊長の視点へと変更された。
それは同時に俺の戦いが終了した事を現していた。
俺の戦いは敵に撃たれた時点で終わったのだ。
敵のリーダーはかなりの名手なのだろう、微かに胴体が映っただけで俺達を打ち抜いた。これが自分のやりなれたゲームで対戦しても多分結果は同じだったはず。
「逃げてください、敵はかなりの強敵です」
まるで死人が吐く戯言のように、俺の声は沈みきっていた。
「どうしたの? 一体何があったの? 何をやらかしたの……」
気がつけば3機倒されたこの状況で体長は混乱していた。無理も無い話だ、四号機がキューブ上で倒されてから俺達がやられるまで五秒弱、一瞬にして見方が全滅したのだから。
「私どうしたら良いかな? 多分勝てないよ……」
隊長は今もなおキューブ上でアタフタとしている、多分女の感という奴なのだろう。幸いな事に隊長の居る場所は敵のスタート地点から二つ目のキューブで。敵の隊長から運良く死角になっていた。
隊長は今も直喚いていたが、正直どうだって良い話だ。これ以上俺が何かした所で戦況が変わるわけでもないのだから。
とはいえ、放っておけるわけもない、今まで戦った仲間、最後まで戦おうとしている仲間を見捨てる事なんて俺にはできないのだ。
そんな思いの果てで、マーキス中将の一言が俺の頭を横切った。
「隊長、グレネード持ってますか?」
そう、隊長機にはグレネードが備え付けられているはず、マーキス中将が言っていた事だ不安が残るが、本当に存在するなら、これほど心強い武器も無い!
「えっと、あっと、たぶんあるとは思うんだけどーっ」
「使い方が分らないんですね」
隊長の返答は予想通りのもだった、更に時間がなくあせっていた俺は隊長へと雑な返答を返す事になった。この時点で残り時間はすでに五秒を切っていた……。
「右薬指のボタンを押して、トリガーボタンです! 隊長の視点から1つ先のキューブ、影に敵がいます! そこめがけて速く投げてください」
「早くせんか!」
四号機の罵倒と、俺の雑な解議の中。その声に答えるように隊長の赤いサイクロプスは動き出した。
腰の右側に手をやる、そして、気がつけば出かい握りこぶしいの中、銀色に輝く物体を捕まえていた。
何処に隠し持っていたのか、まるで分らない。
すぐさま、握り拳の銀色を正面へ投げつけと、キューブ一個分飛んでった先に吸い込まれるように落下して行った。
後には眩い閃光だけが残っていた。
そして、その閃光を最後に、試合終了を告げるブザーが鳴り響く。
そのブザー音と共に俺達の。
激動の。
適正試験が、今、終了したのだ。




