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反撃開始!

 最終ラウンド開始直後隊長から通信が入る。その声、張り切り方から自信の程が伺えた。今回はどうやら期待しても良いみたいだ。

 

「それじゃーやってみよっか。三号機君こっちに来て!」

 

 隊長に言われるがまま三号機は動き出した。そして隊長は三号機をスタート地点正面のキューブへと誘導すると。キューブに向かい合うようにさせて静止させる。

 

「キーボードの(ctrl)キーを押してからTを押して前進」

 隊長は三号機の位置を慎重に確認して、通信を入れた。

 元気の良い隊長の声がコクピット内に響き渡った。たぶん、チームを組んで初めてだろう、隊長がこれ程までにイキイキしているのは。

  三号機は響き渡る声に命令されると首を上下に振った。その後プログラムコマンドを入力したのだろう、キューブに背を向ける状態で密着する形で止まった。

 

「今度は(ctrl)キーを押してKで前進してね」

 

 体長に言われるがまま行動する三号機は、キューブに背を向けた状態で片方の膝を地面に付けると、その姿勢のまま動かなくなった。

 三号機の行動を静観する俺はというと、TSCの繰り出す細かい動作を見て心の中で関心していた。現代のロボットはここまで細かい動作をする事が出来るのか。

 

「それじゃあみんな、三号機君の上に乗るからね。良く見ててね」

 

 隊長のその言葉で作戦の全貌が見えて来た。隊長は三号機を踏み台にして、キューブの上に登ろうというのだろう。

 そんな事を考えていると隊長は通信を終えて、三号機の方へと進んで行く。

 やがて、隊長は三号機の肩に登るとバランス良く直立した姿勢を取った。

 

「オッケー。三号機君、その状態で少し前進して」

 

 体長に言われるがまま、動く三号機は左中指のボタンを押したのだろう、さっきまでの片ひざの姿勢から直立姿勢を取った。その光景は圧巻の一言に尽きる。俺の前方では三メートルを軽く超えるロボットの巨兵が出来上がっていたのだから。

 

「それじゃーいっくよ〜」

 

 隊長の少し抜けた掛声がコクピット内に響きわたっていた。

  その掛声の直後、鳥の様に空高く舞ったTSCは6メートルの高さまで上昇すると、軽快に施設内の空を飛び、キューブの頂上へと華麗に着地した。

 華麗とは裏腹に、踏み台にされた三号機はまるで電池が切れてしまったかの用にクシャリと地面に崩れ落ちた。

 キューブの頂上へと着地した隊長の機体は俺達を見降ろしながら小さくガッツポーズをしている。

 

「あんな事もできるのか」

 

 俺は隊長を見上げながら小さく呟いた。

 一連の作業の余韻も無く、隊長から通信が入る。

 

「どんどん来てね〜、ぼさっと立ってるとやられちゃうわよ」

 

 俺はその言葉を聞いて、一ラウンド目の悪夢を思い出した。

 ココまでやって倒されたくないものだが……大丈夫だろうか。

 内心の不安とは裏腹に、活気の良い声が、コクピット内に響き渡る。。

 

「丸メガネ、ワイも頼むわ!」

 

  今まで静観していた四号機が要領を飲み込んだらしく、通信を入れたのだ。

 三号機はその通信内容に合図を返す様に、機体の頭部を上下に動かした。

  どうやら知らない内に丸メガネが定着してしまったらしい、本人は丸メガネという渾名に疑問を持たないのだろうか? まあ、今はそんな事はどうだって良いか。どうせ喋れないし。

 要らぬ事を考えている内に四号機の機体は空中を華麗に舞っている。そして軽快に金属音を辺り一面に響かせながらキューブの頂上へと着地した。

 見とれてる内に、地上には二機のTSCが残されていた、俺の機体と向かい合うように立っている三号機の頭部カメラが俺の機体を捕らえたのだろう。ある一点で頭部の動きが止まったので、俺は慌てて通信を入れる事となる。

 

「三号機さん、俺もお願いして良いですか」

 

 俺が通信を送った後少しの間が流れたが、キューブの壁に寄り掛かる三号機は頭部を上下に揺らし、俺に打ち上げる意思を知らせてくれた。

  その後、二人を追うように三号機の肩に乗った俺は、機体のプログラムコマンド入力した事により、6メートル近くの空中を舞う。もしこれがパワードスーツか何かなら、生身の状態で爽快感と重力からの開放感を味わっていた処なのだろうが。今この瞬間は遠隔操作である事に後悔するしかなかった。

  それとは裏腹に三号機は大忙しである、俺達が踏み台にする度に崩れ落ち機体を一々起こすと、また次の機体を空中へと持ち上げる。さらには最後に残された事によって、自分はキューブへと登れないのだ。

  最後の間はたぶんその事を考えての事だったのだろうが。全く三号機のパイロットには済まない事をした……。

 

  最後の一人が着地した事を確認したのだろう、隊長から通信が入る。

 

「あらっ、最後はキミだったのね。登れたのは良いんだけど、この後どうしよっか……」

 唖然とする隊長を見かねて四号機は通信に割り込んできた

 

「敵の頭上におるんや、このまま狙撃したらええやないか」

「ええそうですとも。敵が軍隊だっていうのならこちら側はゲリラ戦で挑むまでです!」

 

 俺は今までにないくらい、張り切っていた。ココまでやれば流石の現役軍隊でさえ、予測できないだろう。それに奴らはたぶんあの陣形を崩さない、それが軍隊ともなれば尚更だ。

  最初にランチャーを撃ってきたサイクロプスがそうである、目の前に何体のロボットの残骸があろうが、残骸は彼の気にする所じゃないのだ。自分が任された陣地内に敵が入ってきた、だからランチャーを撃った。ただそれだけの事なのだ。

  詰まる所、ラウンド毎に二号機がやられないのも、そんな彼らの理念が原因なのではないだろうか。

  ――俺が敵ならポイントとして美味しい二号機は逃さないが。

 考えを纏めている内に隊長機から通信が入る。

 

「前に進めばいいのかな?」

「ええ、お願いします。一番最初に一掃された右隅のキューブまで移動しましょう」

 

 俺は一言隊長に通信を入れると、隊長は動き出した。キューブの上で少し助走をつけてから上空へ飛びあがる。

  キューブの上から更に2メートルの高さを隊長機が優雅に飛んで行く。

 それは、人間では到底考えられない光景で、一瞬下を見ただけで足が竦むような行動もTSC達は平気で成し遂げてしまった。

 やがて奥のキューブへと渡り終えた隊長から通信が入って来た。

 

「どんどん付いて来ないと。置いてっちゃうわよー」

 

 隊長の通信が終わると共に、俺たちは次々とキューブからキューブへ渡り始めた。

  俺が隊長機の後ろに続くようにジャンプし、四号機が俺の後ろを付いて行く。

 

「下の通路で良え、丸メガネも付いて来いよ」

 

  四号機はジャンプする直前通信を入れた。下で構えて、茫然と空を見上げる三号機が気になった様だ。無論俺も気にならないわけではない。

  忘れていたわけでもない。

  ただ四号機に先手を取られただけだ。

 

  その通信連絡を聞いた三号機は頭部を上下に動かすと、了解したという意思を皆へとしらせた。そして、次々に飛び移り俺達の後を追うように、キューブの間、下の通路の移動を開始した。

  5メートル四方のキューブ、通路の幅は3メートル弱。

  軽い助走だけでも余裕でお釣りが返って来るレベルの跳躍で。更に、前ラウンドの様にキューブ通路を縫って行くよりも遙かに速く。40メートル地点まで進むのにも数十秒しか時間がかからなかった。

  打ち上げ作業のタイムロスにお釣りが返って来るくらいに。

 

  右側40メートル地点と言えば一番最初に一掃された場所でもある。

  俺が華麗な跳躍を終え、次のキューブに着地すると。先に到着していた隊長から通信が入った。


「一号機君、敵が居たよ!」

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