二ラウンド目――開始
マーキス中将は五分間の休憩を取るといった。
この五分という短い時間を作戦会議に回せといっているのだろうが、正直今の状況で次の作戦を考えるだけの心の余裕はが俺にはなかった。
何せ武装の差が大きすぎる、ライフル一本だけじゃやれる事が限られている。
俺が、コクピット内で項垂れている間、隊長達はと言うと終始四号機パイロット言い争いだ。
「誰のせいで負けたと思っとんのや」
「私のせいだって言うの? 付いてくるしか脳が無いくせに」
正直そんな言い争いなんか構ってる暇なんかなかった。
「うるさいんですよ! 少し冷静になってください」
適正無とみなされたら駐屯地に輸送されてしまうこの状況で、この人たちはどうしてこんなんに呑気なんだろう……。
俺は二人の言い争いを割くように俺は通信を入れた。
「次どうやって攻めますか?」
俺が会話に参加すると、先程まで言い争っていた二人の会話はぴたりと止む。
「あー、君決めても良いんじゃない? 四号機君じゃ当てにならないし」
そして、返ってきた言葉は投げやりだ応答だった。
「賛成やな、隊長の作戦じゃ、また事故るだけや」
そんな、協調性の無い発言に俺は半ばあきれ返っていた。とはいえこの状況下で何も言わないのも惜しい、そう思い俺は作戦プランを提示した。
「それなら、各自バラバラに攻めた方が良いんじゃないですかね。多少は勝つ見込みがあると思いますよ」
正直また見方の激突を食らっても困る。それに、固まって移動したところで、グレネードを一発通路に撃たれれば、それだけで全滅しかねない。
「せやな、ならワイは自由にやらせてもらうわ」
「そうね、私も自由にやらせてもらおうかしら」
以外にも作戦はあっさり受け入れられ、第二ラウンドは各自の判断に委ねる形となった。
「決まりですね」
「決まりやな」
「ちょっと待って……」
「なんや、隊長? まだ何かあるんか?」
「二号機に乗ってた人、リタイヤだって……」
隊長の口から思いも掛けない言葉が発せられた。
「今、本部から連絡が入ったんだけど。戦闘に参加する意思を見せなかったから、コクピットから降ろされたみたいよ」
「えっ、じゃあ二号機はもう動かないんですか?」
「多分そうなると思うわ」
「なんやそれ、せなら本間もんの隊長でも連れてけーへんか」
「何よそれ、私じゃ不服みたいな言い方じゃない」
「今頃気付いたんか!」
四号機の発言の後、何か鈍い音がスピーカーから流れてきた。
その音を最後に暫く無言の時間が流れる。
といよりは、鶏冠に触れた隊長にこれ以上関わりたくないというのが本音だ。
まあ、それ以上に気になる事が二つ程あるのだが。
一つはリタイアした場合どうなるのかという事だ。これは機会があれば隊長に聞いてみるとして。もう一つ、重要なのは、三号機の扱いだ。
隊長達みたいにまともに連絡を取り合えるわけでもないので、如何せん対応に困る。
首を振る事で一応の合図は取れるものの、気を使っている間にグレネードだ……。
考える時間も過ぎ去って行き、休憩時間の終了間際、真っ暗だった画面がスタート地点の映像を映し出した。映し出された映像を見た四号機から興奮気味に通信が入ってきた。
「おー、もどってるやんけ」
「当たり前でしょ、このシステム作るのにどれだけ労力を使ったと思ってるのよ」
俺達の操縦しているサイクロプスと呼ばれるロボットは、一ラウンド同様、奇麗に整列してスタート地点に並んでいる。
肩に書いてある番号が同じという事は、俺達が操縦しているTSCは先程と同じ機体という事になる。
俺の考えはかなりの確率で的中しているだろう。
三号機の腹部には先程の戦闘で出来た銃痕がクッキリと残っており。銃弾との摩擦で出来た丸い黒ススの痣を腹に抱えているからだ。
本当に容赦の無い事だ。生身の人間なら今頃、下半身と上半身が分裂している所だろうに……。
それ以上に恐ろしいのは、このサイクロプスと言われる機兵の方か、対戦車用ライフルの重いブローを食らっても、ヘラヘラしてやがる……。世界にこんな技術があったとは内心驚きだ。
世界の最新技術に関心していた俺は、先ほどの隊長の一言が少し気になっていた。そして、その気になるい事を聞くために隊長へと通信を入れる事にした。
「隊長って開発者か何かだった……」
俺の発言と共に、甲高いブザー音が鳴り響く。
そのブザー音は俺の発言を遮断し、第二ラウンドの開始を俺達へと宣言していた。
やはり、皆は俺の発言を聞き洩らしたらしく、開始早々四号機のパイロットから通信が入ってきた。
「そいじゃ、ワイは左隅から攻めるは。ついて来るんわ構わへんけど、邪魔だけはせーへんといてな」
その発言をし終えると、四号機は左隅のキューブへと移動を開始した。
続く様に三号機も四号機が移動していった左隅へと移動を開始する。半分くらいまで追い付いて俺と隊長の立ち尽くしているスタート地点を見返すと。また、四号機の方へと走って行った。
銃撃の影響なのか、心なしか移動か少しフラフラしている様に見えたが、気のせいなのだろう。四号機号が完全に通路に入ったのを見届けてから俺も行動を開始した。
「了解。俺は右隅から攻めるよ、隊長も一緒にどうです?」
「えっ!? 良いの?」
「あんまり気にしないでください」
――この機会しかない、いままココで聞くべきた。
「隊長って開発者か何かだったんですか?」
その質問に隊長は快く答えてくれた、自分が話題に乗った事で浮かれているのだろうか? それとも一ラウンド目に起こしたヘマを帳消しにしたかったのだろうか。
「うん、そうよ。ココの責任者の助手をしているんだから」
隊長は自信満々に答えていたのだが、結局の所助手なのである。
――出来る事なら開発者から直接話を聞きたかった所ではあるのだが……。
「えっ、助手をやってるんですか?」
嫌味っぽく通信を返すと、俺の意見に続く様に四号機からも連絡が入った。
「そうや、そうや、こんな変な実験に無理矢理参加させやがってからにー、オレの内定返せや、コラッ!」
「ごめんね、最初はこんな事の為に使いたくなかったんだけどね」
四号機パイロットの激しい口調に負けたかのように急に隊長の声のトーンが下がった、先程の自信は何処に行ってしまったのだろうか。
「そんなのは、どうだってええねん。問題は結果や結果、結局こないな事に使われとったら無意味っちゅう話や」
確かに四号機の意見にも一理ある。
そして四号機のパイロットが話を続けようとした時だ。四号機の無線の奥から銃声らしき音が聞こえてきた。
銃声の音はリズムよく二回鳴った。そして、聞きなれた日本軍のライフルのバースト音が続けて聞こえてきた。
一連の音から判断するに、四号機側は交戦中みたいだ。
「ちぃ、三号機がヤラレよったで……ドクソが!」
敵側の射撃制度はかなり高いらしい。ライフル弾二発で一体を倒すには二発とも頭部に当てる必要がある。四号機側の状況が掴めないので何とも言えないが、敵側は射撃制度を上げるためにバーストも解除しているみたいだ。
「今は隊長を責めるの止めた方が良いんじゃないですか?」
俺は一言、通信を入れると。軽い舌打ちの後に四号機からの無線連絡が止んだ。
隊長からの連絡もそれ以降無かったので、ロボットの足音だけが不気味にスピーカーから木魂した