ラウンド1――終了
気が付けば20メートル、その距離を一発の銃弾が走った。避ける動作も間に合わず、猛進する銃弾の直撃を受けた赤い機体は遭えなく空中を舞ったのだ。
倒れてもなお三号機の視点は青い機体を捕らえながら。肩から腕に掛けて持たれてい獲物を映し出していた。それは、今まで見た日本軍のライフルとも、米軍のライフルとも似て非なる物だ。
形状からして見るにスナイパーライフルか……。
絶望的な状況に四号機の通信が飛び込んで来た。
「クソキャンプかいな!」
「何よアレ……」
「スナイパーライフルですね、型まではわからないですけど」
「なんや知らんのか、あの先端のマルズブレーキ、そして黒いオートマスナイパーは間違いない、バレットやで。」
「そんな名前なんですか? 結構詳しいんですね」
「まあな、兵器関係は好きなんよ。あれは米軍正規採用の超長距離砲や! 人なんか食らったら、一瞬で真っ二つやで」
「でも超近距離で使ってたわよね……」
「本来なら伏せた状態で使うんが定石やねんけど、あの様子なら型手持ちもできそうやな」
「本当に手加減無いんですね……」
「私のボーナスも無理みたい……」
「それにしても、スナイパーのキャンパー程厄介な相手もいないですよね。敵も追ってこなかったんじやないみたいですし。中央におびき寄せて隊長機がそれを狩る、そういうフォーメーションだったみたいです」
そんな俺の発言を返すように、隊長から通信が入った。
「気になる事ってそいういう事だったの?」
「戦力が分かっただけで十分です。次に備えましょう」
「そやかて、スナイパー倒すんにわ同じくスナイパーライフルが必要やで」
「そんな手強いものなの? 近距離なら私達に武がありそうだけど?」
「無理や、銃器の中でスナイパーライフル程舜殺に適した武器は無いんや」
「そうですね、アサルトで性格に撃って0.5秒時間がかかるのに対して、相手型はプロ、コンマ0.1秒で撃ってくる弾は対処できませんよ」
「本当に絶望的じゃない……」
「それに……。ライフル一本しかもバーストの制約付きじゃ武が悪すぎます、どうにかならないですか隊長?」
「こんなに戦力差があるなんて私も聞いてないわよ!」
混沌とした会話を割くように、スピーカから大音量のブザー音が流れた。その音を確認してディスプレイ画面上部の制限時間を確認すると、0が四つ並んでおり、その文字の羅列は俺達に試合の終了を告げていた。
そして、そのブザー音と共に今まで三号機の主観だった画面が真っ暗になった。
画面が真っ暗になって一拍の間も許さぬ内にアナウンスが流れる。そのアナウンスの声は米軍中将マーキスの声だった。
「諸君、次のラウンドは五分の休憩の後行われる、味方側との通信は生きているので各自作戦を練るもよし休むも良しだ」
その後低い高笑いと共にアナウンスは終了した。
マーキスの高笑いを聞いている内に敵に倒された悔しさと、状況に対する理不尽でムシャクシャして来た俺は、気が付けばコクピットの外壁に拳を打ち鳴らしていた。
思いの他外壁は固く、骨に来る痛みだけが虚しく残る事となった。
演習も兼ねているとは聞いていたものの、これ程まで戦力差があるとは、せめてグレネードでもあれば状況は変わってくるのに……。
俺はそんな事を考えながら深く椅子にもたれ掛かると、コクピットの中では大きな溜息だけが木魂していた。
はたして第二ラウンドはどうしたものか……。