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隊長の失態

暫くして、音のした先に辿り着いた俺は、通路をそっと覗きこむ。

 ただ通路を覗き込むだけの作業、そんな作業なのに、少し機械を動かすだけで心臓の鼓動が徐々に大きくなっていくのを感じた。

 その鼓動はコクピットを抜けて通路の敵に聞こえてしまうのではと思うくらい木魂している。

 さらに俺が覗き込んだ瞬間に青い機体が姿を現したので、一瞬息がつまりそうになった。

 生憎敵は後ろを向いていたので、たぶん俺の事には気が付いていないのだろう。俺は敵を発見した事で隊長命令から解放され、その事をすぐさま隊長達へと音声通信で報告を入れる。

 

「敵です、発見しました! 青いのが一機だけ、後ろを向いて立っています」

 

 敵を発見したという居心地の悪さのせいで、俺の声はかなり裏がえっていたと思う。

  そんな俺の音声通信へとすぐさま返事が返ってきた。

 

「わかっわ、すぐそっちに行くから待ってて」

 

 隊長は一言、俺に告げると無線はすぐさま切れた。

 そして、無線が切れた事で俺の頭の中で一つの疑問が浮かび上がったのだ。

  すぐにこっちへ来ると隊長は言った? 俺の居る所にあいつらが来る……? こんな狭い通路に……三台も?

 正直考えるだけ無駄だった、不安は閃光が過ぎ去って行くが如くに的中したのだから。

 俺の後方から床に金属をすり合わせながら、恐ろしいほどの騒音を上げ、三台の機兵達が近付いてくる。

 その騒音でわかる、隊長達は走っている……。

 走音は演習施設内で浮き上がるように鳴り響く。

 彼らは俺がこの場所に来るのにどれだけ苦労したか知っているのだろうか。徐々に腹が立って来た俺は、隊長達へと通信を入れようとした。

 そんな時だ、俺の思い、先手を討つ様に隊長機から連絡が入った。

 

「あっ、ちょっとどいてーーーー!」

 

 間の抜けた悲鳴が俺の真横から聞こえて来る、その声に驚き声のした方向を振り向くと、赤い機体が猛スピードで俺の方向へと迫って来た。

 

「へっ!」

 

 気がつけば俺も間の抜けた悲鳴を上げていた、二つの機体は高速で衝突した為に空中を舞い。

  そして、重力に引きよせられながら地面へと落下した。

 衝突する瞬間に型のナンバーが俺には見えた、確かゼロが三つ並んでいたっけ……。という事は隊長が止まりきれずに俺へ衝突したという事になる。

 その弾みで俺は隠れている場所から前方へと弾き飛ばされるように通路に放り出されてしまったというわけだ。

「何するんですか!」

 荒々しい声が鳴り響く。

 

 

「ごめん、ちょっと操作ミスッちゃった」

「それよりも大丈夫なんか? 通路に敵おるんやろ?」

 

 俺は四号機の通信内容で、改めて自分の置かれている立場を再確認した。

 たぶん敵からは俺の姿が丸見えなのだろう、さらに間抜けに二体も地面に転がっているのだ。

 この状況を攻撃しない方が不思議なくらいだ。

 俺のサイクロプスも激しくバランスを崩しているらしく直に射撃体勢を取れる状況ではない。

 仕方なく、敵の方へと振り向くと、正面の敵は既に銃器を構えていた。

 見るにMl6のグレネードランチャー装備型。

 ……とても実践的である。

 脳裏に一瞬衝撃が走った。

「隊長機!」

 目の前の青い機体が、右手人差し指を少しずつ動かして行くのが確認できた。

  そして、その指がトリガーを引いた瞬間に奇妙な音が俺の正面から鳴った。

 そんな音と共に勢い良く煙を噴いた丸い物体が俺達の倒れている方向目指して勢い良く飛んで来た。

 丸い物体はやがて、俺を通り過ぎると、真後ろの壁に跳ね返り二回ぐらい地面でバウンドして、静止する。

 地面でバウンドしたランチャー弾が俺の視界へと帰ってきた時……。

 俺の鼓動の高鳴りは既に最高点まで達していた。心臓が口から飛び出そうなくらい、俺の内側からノックしている。

 その瞬間、辺り一面が激しい光源に包まれる。

 

「うぐあっ!」

 

 強烈な光に叫ばずにはいられなかった……。

 薄暗いコクピット内が白色で覆われる、正面からの光源だというのに、その明りは強烈で、俺の視力を短い時間奪うには十分なくらいだった。

 

「ちょっと、どうなってるのよ。機体が動かないわ」

「ホンマやんけ〜、いったいどうなっとるんや?」

 

 やがて視力が戻って来るにつれて、自分のディスプレイを確認する事が出来るようになった。

 自分の視力が戻った事で、我に返った俺はみんなへ連絡を入れる。

 

「左下に体カメーターがあるって資料に書いてありましたよ」

「そないな事は知っとんのや。なぜこうなったかを聞きたいんよ」

 

 あの発光が疑似的な爆発になっているのだろう。案の定、俺の体力は0になっている。

 次に俺はディスプレイの右上へと目をやる。なぜなら、その試合中にやられた奴等がそこに表示されるからだ。

 そこには、思っていた通りに隊長機と四号機の機体番号が書かれていた。三号機は顕在のようだ。

 最後尾で構えていたので、直接的な爆発には巻き込まれなかったのだろう。

 俺が必至に状況を考察していると、四号機から連絡が入ってきた。

 

「おい! 聞いとるんか、何がどうなって、こうなったんや?」

 

 それに続く様に隊長機からも連絡が入って来る。

 

「なんか、動かないんだけど……」

 

 三台同時に機体が動かなくなったせいか、俺達は混乱していた。そして、俺は自分の中で状況、話の順序を纏めると、隊長達へと連絡を返す事にした。

 

「敵の武器がM16にグレネードを装備してるタイプでした、さっき発光したでしょ?」

「つまりどういう事?」

「あの銀玉ランチャー弾やったんか……。おたくついとらんなー」

 

 四号機のパイロットの発言からは舌打ちまで聞こえてきた。

 

「隊長機にでも鉢合わせたって事? 本当に運無いんだから」

 

 そう、煙を噴いて飛んで来た物体はグレネードランチャーの弾だ。発光の仕方からして実際に爆発したわけではなく、光源の照射面積によってダメージが決まる仕組みらしい。

 それにしても、一気に三人を倒すほどの威力、脅威である。

 俺のはネットゲームの癖で、気がつけばキーボードの「TAB」キーを押していた。

 押した瞬間ディスプレイ内に今残っている残存勢力が表示される。

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