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ミッションプラン!

  試合数は三回、先取戦ではないので三試合終了時点で試験終了となる。

  一試合の制限時間は十分。

  勝利条件は制限時間内に敵を全滅させるか、終了後見方の人数が多い方を勝利とする。

 機体の耐久力は試験の為体力を作成に最大値を100とする。

 敵側からの射撃ダメージは、腕及び足25胴体45頭部80とする。

 なおグレネードの類は敵味方なくダメージを与えるため、チームキルを防止するという名目上隊長機以外は実装されていないものとする。

 コクピット内には音声通信装置が存在する。

 通信装置を利用し仲間とのコミュニケーションを図って戦闘を遂行する事。

 レーダーは画面の左上に存在する、味方の位置と地形を把握するのに便利だ。

 仲間が戦闘で倒れた場合、画面右上に表示される。

 直、誰に倒されたかは表示されないものとする。

 今回の戦闘場所は演習ステージとする。

 天井までの高さは20メートル。

 広さは半径100メートル。

 乱雑に配置された障害物の名称はキューブと言う。直径5メートル四方のコンクリート壁で造られた物だ。

 キューブを上手く使い戦況を有利に進めていければ良い。

 

  試合開始!

 

 頭の中を尽き抜けて行くようなブザー音と共に試合は開始された。

 それと同時に演習用のサイクロプスは駆動可能な状態へと移行する。

 試験が開始された直後、俺はコクピット内のトラックボールを操作していた。

 すると、ディスプレィ内中央に存在するクロスヘアーを中心に視点が移動しているのを確認する事ができた。

 視点の操作系を確認してから、運動操作の確認へと入る。確認する内容は正常に動くかどうか、ジャンプや全身などの基本的な捜査系統だ。

 どんな手を使ってでもこの試験に合格しければならない、前線送りなんて御免だ。そう言った感情が俺の中に存在するので、おのずと操作系統の確認にも熱が入る。

 その俺と一緒に戦う仲間を確認する、俺が奇妙に動いていたのが気になったのだろう。三台のサイクロプスが俺の方を不審に見つめていた。

 機械なので見つめているという表現自体当てはまらないが……。

 肩のところに先ほどのコクピットの型番が書いてあった。

 横からTSC302〜304。それと、TSC000だ。

 隊長機は違う場所で操縦をしているのだろう、俺達のいた演習施設に000のナンバーを持つコクピットは存在しなかったはずだ。

 そんな事を考えていると音声通信が俺のコクピット内に飛び込んで来た。それと同時にディスプレイ内に特殊なアイコンと通信相手のナンバーが表示される。

 

「ぼさっと立ってないで、さっさと行くよ!」

 

 その通信と共に一斉に三台のサイクロプスは隊長機の方向を向いた。

 音声で良く分かる、女性特有の高い声で俺達へと通信を送ってきている。

 声の主、隊長が女性という事もあり、先程までの強い意気込みは消え、多少の不安が心の底から込み上げてきた。

 とはいえ、このまま突っ立ってるわけには行かないのだ、今は出来る限り前向きに事を運ばねばならない、なるべく良い印象を与えねばならない。

 確か通信用のボタンは右手小指だったはず、説明には出ていなかったが操作説明中に見ていた資料にそんな事が書いてあったはずだ。

 マイクが何処にあるか分からないが俺は一応右手小指のボタンを押してかコクピット無いで孤独に発言した。

 

「どうやって攻めますか?」

 

 半ばヤケクソ気味に答える俺の頭の中では、昔見た戦争映画が脳の中で再生されていた。

 飛び交う銃弾の雨の中、目的地まで進む兵士達。爆撃で腹の肉が裂けたり、スナイパーに頭を狙撃されたり。

 自分がアレになるのはやはり御免だ!

 そんな思いだけが、この馬鹿げた戦争ゲームへの参加を表明させたのだ。

 他の三人も同じ気持ちである事を祈るばかり。

 暫くして、隊長機から通信が返ってきた。

 

「とりあえず付いて来て、ここに居たら、撃破されちゃうから」

「了解やー」

 

 俺の他にもう一人から通信が入った。

 その音声通信の声は先ほどの関西人風の男のものだった、取り合えず彼もやる気なのだろう。

 通信ナンバーTSC304、関西人は四号機に乗っているのか。

 その合図と共に隊長機の後を迫うようにして、一列になる形で4台のサイクロプスが移動を開始した。

 移動途中、気になる事が一つだけあったので通信を入れる事にした。

 

「隊長、TSC302が先ほどから動いてないのですが」

「ほっときなさいよ、一々構ってられないわ。私のボーナスが掛ってるんだから」

「なんや、ボーナスって。ワイらそないな物のために戦わされとるんか! 笑けるわ〜」

「御金は大切なの、学生の君達も社会に出たらわかるわよ」

「この軍隊徴兵も十分社会だと思うんですけど……」

 

 隊長の以降もあり二号機をそのまま置いて行く事になった。

 そして、先ほどの通信に参加していたのは俺と四号機の関西人、三号機は俺達の後を付いて来てはいるものの会話を傍聴している形となる。

  喋れないのか……。

 まあ傍聴、傍観はこういったゲームにはつきものなので対して気にはならないが……。誰が動かしているのかは気になる。丸メガネか? それとも黒フードなのか?

 一番初めにコクピットに押し込まれたのでまるで情報が無いのだ。

 

「四号機さん、三号機に乗ってる人って誰かわかりますか?」

「一応知っとるぞ、小柄の丸メガネやったと思うが。それと二号機は黒いフードの陰気なガキやったで」

 

 つまり、フードが動いていないって事になるのだろう。そんな情報が何の役に立つのかは分らないが一応収集しておいて損はないはずだ。

 次は敵の情報が欲しいな。

 入り組んだキューブの森を移動しながら俺は隊長機へと連絡を入れた。

 

「あのー、できれば敵の情報が欲しいんですけど、隊長わかります?」

「そうやな、アメリカの演習も兼ねとるって言ってたんや、武装が同じって事はないやろ」

 

 どうやら四号機も同じ事を考えていたらしい。

 

「ですよね、アメリカ軍が日本のショボイライフルなんて使うとは思えないし」

 

 俺たちの問に答えるように隊長機から通信が入った

 

「ごめんね、私、軍隊に詳しくなくって。今これ動かしているのも臨時だから」

「なんや臨時なんか、臨時の隊長さん大丈夫なんか? さっきも金がどうとか言っとったし」

「御金は御金、演習は演習。たぶん此方側の武装と大差無いと思うわ」

「武装系統が同じである事を祈るまでですね。グレネード使えないのも意味分からないし」

「そうや、そうや、これ系統のゲームやったらグレネード三種揃ってワンセットが普通。それをライフル一本ってどんだけケチやねん」

「これはゲームじゃないの、演習よケチとか言わない」

 

 ライフル一本は恐ろしく心細かった。

 向こう側が演習だと言う以上、米軍の武装が同じとは限らない。さらに手加減をしてくれるとも限らない。

  とはいえ、マーキスという軍人が言っていたように、隊長以外がサブ武器を使えないとしたなら多少は楽になる。

 それに今回隊長は臨時だといっていたが、動き方からしてサイクロプスを動かすのに多少慣れているみたいだ。

 どちらにしろ一度戦闘が始まってみないとわからない状況に変わりは無いのだが。

 

「それにしてもこのサイクロプスとやらの操作モチーフがFPSと同じなのは驚きやな」

「そうですね、直観的に動かせるのはかなり良いです」

「おっ、俺以外にもFPSを知っとる奴がいとは驚きやー」

「いやいや、今は世界的に浸透してきてますって」

 

 演習という形であれ戦場である事には変わりはない、そんな俺達の会話に花が咲きそうになった頃、隊長から通信が入って来た。

 

「私語はつつしみなさい、今物音がしたわ」

 

 シレっとした口調で隊長から連絡が入った。そして、隊長の物音という言葉は一瞬で俺に緊張感を与えた。

 

「なんや聞こえとったんか、それより物音ってなんや」

「えぇ、全部聞いてたは。たぶん物音は足音ね」

「どこら辺から聞こえたかわかりますか」

「話声に紛れてたから位置まではわからないわ。敵の足音だと思うけど、リズムからして歩いてるみたいね」

 

  このステージ内は無音といって良いくらい音がしない。

 先ほどからする音といえば、味方機の歩く足音と、陽気な関西弁くらいなもの。

  しかも足音は金属同士がすれ合うようにかなりの騒音で、俺達の位置から聞こえたという事は敵側も俺達の足音に気が付いている可能性がある。

 

「ねえ、私語してた罰として一号機君ちょっと見てきてくれないかな?」

 

 状況を考察している最中に隊長機から俺宛に名指した通信が入って来た。そしてその通信内容に対して返事を返す。

 

「嫌ですよ、敵のレベルもわからないんですよ?」

「一号機君の言う通りやで、こういう時は隊長が体張るもんとちゃうんか?」

「だって、怖いじゃない! あっ、こういう場合ってあれよね。隊長命令っていうのかな?」

 

 隊長の無茶苦茶な発言が宙を舞った、そんな発言に、通路のど真ん中で唖然としていた。

 そして、そんな発言でも分かる、隊長は素人だ……。

 本当ならそういった発言には反論するべきなのだろうが、今は作戦中、利口に振舞うべきだ。

 それに見て来るだけなら少し覗いて帰って来れば良いのだから比較的安全か……。

「わかりました隊長命令ですね、今ちょっと見て来ますから、静かにしていてくださいよ」

 渋々と隊長命令を受け入れた俺は、キューブとキューブの隙間から辺りを覗き込むようにして見回す事にした。

 音の方角を確かめ、ジグザグに配置されたキューブを縫うようにして静かに歩いて行く。

 物音のした方向へと進んで行った。

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