壇上の二人
この施設の名前は『メルトダウン』というらしい、自慢げに話す自衛官達の立ち話に少しばかり耳を傾けただで色々と情報が零れ落ちてくる。施設内に日本の自衛軍以外にも外人が多いのはアメリカの御偉いさんが態々完成した施設を視察に来ているためだとか。
そんな、俺はパイプ椅子に座りこれから顔を出すであろうその御偉いさんの登場を、茫然自失、見守っていた。
自衛官もアメリカの兵隊も肩に物騒なライフルをぶら下げて、鋭い視線を俺達学生へと送っていた。多分下手に動けば直ぐに射殺されてしまうだろう……日本は一体いつからこんな軍事国家になってしまったんだ。
駐車場に止まってから、自衛官に施設内へと誘導された。ほぼ流れ作業的にこなす彼らに抵抗しようとする兵など誰一人と現れる事無く、ダラダラ、誘導されるがまま一列になって、施設内奥のホールへと案内される事になったのだ。
施設の周辺には木々が等間隔で植えられ、地下で日の光など皆無だというのに、葉は青々と生い茂っていた為に、一見して軍の施設など到底考えられない外見だ。
外見に騙されるなとは良く聞く言葉だが、これをどう説明すれば良いのか? 円計上に聳え立つビルの大きさは凡そ三十メートル。周辺にはグランド、更にテニスコートに温室のプールまであるじゃないか……、きっと何処かに体育館もあるのだろう。物騒な面持ちの自衛官やアメリカ兵さえいなければ。出来の良い大学ですんなり話が通るというのに。
施設内に案内されてから直ぐというもの、強烈なニスの匂いが俺の鼻を刺激した。ペンキを塗り替えてからそれほど時間が経過していないのだろう、その事が俺に急ごしらえの施設であるという印象を植え付けさせる事になった。
自衛官に誘導されるがまま、ホール内へ入った俺は目を丸くして唖然とする事となる。
「おいお前、出入り口で止まるな。後が支えるだろ」
「あっ、すいません」
渋滞を予想して吐き出された激が、俺を努突いた。
その事に慌て、急いで前方の列に追い付くと、また誘導されるがまま歩を進めた。
ホールは大きさは思いのほか広く、きっと東京中の電脳系大学から学生が集められてきたであろうホールの席にはギッシリと人で埋め尽くされていた。
周辺からはヒソヒソ話、メソメソ話が聞こえてくる。
実に不気味な雰囲気だ……。
「それじゃ、ここ、横の列15人座ってください」
施設内フル活用で誘導する自衛官の一人が急に人数を数え始めた。肩を軽く叩きながら、頭の中で人数を確認している。
「それじゃ、灰色のシャツの君まで。ココの列に座ってね」
「あっ、僕までですか?」
「そう、君まで! いそいでね。時間無いから」
自衛官に言われるがまま、前日に作られたであろうパイプ椅子の座席へと俺は座る事となった。座ってから天井を見上げると、まるで映画館の上映される前の様に天井のライトはオレンジ色の光を一斉に放ち、俺達を包み込んでいる。
俺が列の最後という事もあり、案内された席は中央の通路に隣接していた。
暫くして、全ての席が学生で埋まったのだろう。先程まで誘導していた自衛官達は何所かえ消え複数あった出入り口はすべて封鎖された。
各出入り口を厳重に守るように、二人組で構える兵隊達は、全員、肩から物騒なライフルを構えている。
だからといってホール内が静かとは限らない。自衛官達の目を盗むように運良く同期の学生や友人と出くわした学生等の話声は未だ止む事がない。
心の弱い学生はあまりにも突発的に起きた出来事に泣きじゃくり。
心の優しい学生はそれを宥めるか、慰める作業に追われ。
短気な学生はこの状況に対する鬱憤を晴らすべく八つ当たりを止めなかった。
ホールの正面には檀上がある。檀上には演台が設けてあり、マイクも設置されている事から、この先誰かが演台で演説を繰り広げるのであろう事が容易に伺えた。
それ以上に気になる事に、檀上の隅っこには黒い布で覆われた二メートルくらいの置物が設けてあったのだ。
本来好奇心旺盛な方ではないのだが、この状況に対し、徐に前方に置かれ隠されている、超物な置物には十分目を魅かれた。
――極秘に研究開発した兵器とか……。
――流石にそれは無いか。普通なら横に長くなるはずだ。