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自宅にて−4

今回徴兵の対象となるのは「現在大学その他に在学している高校卒業資格を持つ男女」と書かれていたが。女性の場合は一部例外も発生するらしい。

 こんな事をして企業は大丈夫なのだろうか? そんな事を考えながらページを捲ると、二ページ目と三ページ目には軍隊区分の説明書きがされている。

 軍隊の区分は(陸・海・空)と存在しており、各大学の所属学部によって配属される駐屯地が変わって来るらしい。

 そして、その事を次のページから始まる対象学校表で確認してくれという事だ。

 

 俺は赤紙の説明書きの通りに対象学校表が書いてあるページを広げる。

 その時、赤紙が分厚くつくられている理由を知った。

 次のページには東京の大学、そして学部すべてが「あいうえお順」に羅列されており。玄関という薄暗いスペースの中で字の細かさに目をやられていた。

 このまま玄関で学校表を眺めていても埒が明かないと悟った俺は、赤紙を手に持ちながらリビングへと移動する。

 その後、本格的に自分の大学、そして学部が何処の軍隊に所属しているのかを確認する事にした。

 できる事なら陸軍は遠慮しておきたいものだ。ひとたび戦争ともなれば前線で体を張らなければいけない分けで……。それに、訓練も厳しそうだ。

 

 俺はリビングへと戻ると、ビデオデッキの録画を止めて、テレビもろとも電源を切ると、そのままの勢いでリビング中央にある四脚テーブルに赤紙を乱暴に置いてから自分の大学を確認し始めた。

 大学・短大・専門の数なんて東京都内だけでも500以上存在しているわけで、自分の大学を見つけ出すのに少しばかりの時間がかかった。

 

 暫くして、自分の大学の名前が目に入ってきた、慌てながら隅の配属先を確認した俺は……落胆した。

 配属先は案の定「陸軍」と表記されているじゃないか。

 一気に憂鬱になった俺は、もう一度自分の配属先を確認する「自衛軍陸上部隊・特殊科」

 ある一文字に目が釘付けとなった。そう、「特殊科」という文字だ。よくよく確認してみると特殊科は俺の学校以外にもポツポツと表記されてあるみたいだ。海軍にも空軍にも書かれている。

 例外的に陸軍にのみ存在するという分ではないのだ。

 俺は特殊科という言葉が気になり、赤紙内を散策してみたがやはり詳しい説明は書かれていなかった。

 そして、もう一度対象学校表を広げてみる、良く観察してみてある事に気がついた。

 この特殊科にはある法則があったのだ。特殊科が付く大学は全て、情報系統や通信系統に強い大学で、体育会系や文系の名門大には驚く事に表記されて無いのだ。

 

「何で俺の三流大学に……」

 

 その後も気にはなったものの、いくら調べても埒が明かない。

 そのまま、ページを捲りながら赤紙を読み進めて行き最後のページへと差し掛かっていた。

 最後のページにはスケジュールが書かれていた。

 そして、またしても俺は目を疑った。そして思わず声を出していた。

 

「明日っ!」

 

 徴兵の開始日を確認してみる、確かに同じ年の同じ月、そして翌日の日付でスケジュールが組まれているじゃないか!

 スケジュールの始めは六時四五分から開始されていて、俺の平均起床時間よりも五時間も早い……。

 無理やりなスケジュールを見た俺の心の中で、ある閃き的なものが通過して行く。

「そうだ、バックれよう」

 そんな事を呟きながらスケジュールを読み進めて行く、一番下に注意事項と書かれている部分でまた目が止まった。

 目が止まった先の注意事項を読んで俺は先ほどの閃き、呟いた事を後悔していた。

 

「もし、開始日に部屋にいなかった場合全国指名手配になります」

 

 その他にも色々と書かれていたのだけれど、今の俺にとってはその一言がやけに痛かった。精神的にその言葉は人間の行動を強力に制限していたのだから。

 もし実家に帰った場合も全国指名手配になるのだろうか。たぶん今の日本ならやりかねないだろう。こんな急激に軍備を増強し始めてるんだから。

 だが俺には未だに府に落ちない点がある、開始が六時四五分なのは良いとして何処に行けば良いんだ? 寝坊した場合も指名手配になるのか?

 そんな幾つもの疑問を、最後の一分が綺麗に搔き消してくれた。

 

「明日の朝、迎えに行きます」

 

 こんな狂った連中が……明日来るのか……。

 急に疲れが噴き出して来た俺は、気がつけば部屋の隅にあるベットで枕に顔を埋め込んでいた。

 いつもと変わらぬパソコンの起動音をベットに寝そべりながら聞いていた。

 そういえば島根は何処の部隊に所属するんだ?

 あいつ北海道って言ってたよな。

 俺はてっきり島根県民だとばかり思いこんでいた。だから出身地だって聞かなかったんだ。

 あっ……まだ、買い物袋からタマネギ出して無いや。

 まあ良いか、明日でも……。

 気が付けば部屋には一人分のイビキだけが木霊していた。

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