最後の言葉は…
どうして…?
そう思いながら、橋口 里穂は涙を零す。
2、3日前まで一緒にいた大切な人が、突然いなくなってしまった。
「何にも、聞いてないよ…」
そう呟いて、2人でよく来ていた公園の地面に座り込む。
空を見上げると、満月が私を照らしていた。
『今日は、月がきれいだなぁ…』
私を見つめながら、そう呟いたあなたはもういない。
あの言葉を聞いた時、夏目漱石の言葉を思い出して、あなたも知ってるんだ…と嬉しかったのを覚えている。
最後の言葉は、『またね』と言ったあなただけど、本当は『さようなら』だったんだね。
私、あなたに嫌われる事…してしまったのかな…。
それとも、何か悩んでいる事があったの?
私は、あなたの事を何にも知らなかったんだね…。
これから、私はあなたの事を探さない方が良いのかな…。
そんな事を考えながら、涙で滲んだ満月を眺めていたのだった。