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非日常的日常(旧)  作者: 長男
7/85

第七話 ギルド協会

今回も少し短めです。今更ながらちゃんとしたギルド施設の構図を考えていなかったことを悔やんでいます。まあ内装とかはご想像にお任せます。


11/23 短かったのでギルド1234全て統合しました。

『境目』を越え、視界がガラリと変わる。

 石造りの壁、石畳の床、そして驚愕の表情でこちらを見ている人々。

 それらを見て確信する。

 来たぜ、異世界。


 ...何すれば良いのこれ。

 と、思っていたが、数人のうちの一人が唐突に声を張る。


「ほら、来たぞ!やはり来たぞ!」


 その長身の女性はかなり興奮している様子で、隣にいた男性に自慢をするかのように言った。

 そして長く艶のある黒髪をたなびかせながらこちらに歩み寄る。


「おい、どうする」


 高橋が小声で聞いてきた。

 うーん、ここは向こうからのコンタクトを待っていればいいんじゃないかな。敵意とか感じないし、美人だし。

 女性は豊満な胸を張り、よく通る声で自己紹介を始めた。


「はじめまして!私はクロ、君たちの仲間になる予定のギルドマスターだ!」


 名前短っ。

 とりあえず、友好的関係は築けそうだ。

 文化は同じとテスアが言っていたが、ギルドマスターということばの解釈も同じなのだろうか。もし仮にそうならば、これから俺たちは彼女のギルドに所属するってことだろう。

 雇用先がすでに決まっているということに、今更ながら安堵する。


「えーっと、それで俺らは何をすればいいので?」


 めずらしくも涼がまともなことを尋ねた。俺らも自己紹介したほうがいいかな。


「おお、そうだな。えーと....何をすればいいんだろう」


 そこはかとなく不安を感じる。


「まずはギルド長に報告、でしょ?」


 新しい声が聞こえた。

 声の主は、クロの後ろからピョコッと顔を出す。

 身長は140くらいだろうか。真っ白な髪は腰あたりまで伸ばされ、慎重に似合った幼い顔は少し笑っていた。あらかわいい。


「ロリ」


 阿呆が小声で言った。なんだ「ロリ」って。もう少し助詞助動詞動詞を使えよ。

 そんなアホのアホなセリフに戸惑う様子はなく、白い少女は余裕ある表情で続ける。いや聞こえなかったっぽいな。


「貴方たち、とりあえずギルド長って人のところに行かなくちゃいけないから着いてきてくれる?質問したいことがあると思うけど、道中に聞くわ」


 少女はそう尋ねてきた。こちらの話も聞いてくれそうだし、事務処理はさっさと終わらせたいし、いいんじゃないかな。

 一応二人の様子も伺うが、異論はないらしい。


「わかった」




 シロと名乗った白い少女は、ギルド長とかいう人物がいるらしい部屋までの道案内をしてくれた。


「ところで、優太たちはこれからのことについて、どれくらい知ってているの?」


 道中で、シロがそんなことを尋ねてきた。

 いきなり下の名呼びとは、この世界は本当に日本の文化を引き継いでいるのだろうか。

 というか名前単純過ぎない?クロとシロて。他の人たちもそうなのかな。


「冒険者になって冒険するってことくらい」


 とりあえず素直に言う。

 

「じゃあ、先ずはギルドについて話そうかな。冒険者っていうのはギルド協会っていう機関に所属しているんだけど、多くの冒険者は更にそこからグループを作るの。そのグループのことをギルドって呼ぶんだけど、貴方たちには私たちのギルドに入ってもらう予定なの。もちろん嫌なら別のギルドに入ったり、どこにも所属しなかったりしていいんだけどね。ここまではいい?」


 うん。


「次にギルドの種類について。もともとギルドっていうのはただ冒険者達がパーティーで冒険する為のものだったんだけど、今では物造りや農家組合といった、地球で言うところの『会社』のようなものになったのよ。素材を自分達で調達できれば安上がりだし、ギルド協会と癒着があれば商いが捗るしね」

「勿論我々は冒険ギルドだぞ。新しい地で仲間と共に冒険する。う~ん!楽しみだ!」


 わかる。


「ちなみに冒険者にはレベルといつものがあってな、冒険者の強さや貢献度によって六段階にランク分けされるんだ。そして現在、最高ランクのレベル6は三人しかいない。私も早く追い付きたいものだ」


 最高レベルが三人って少ないな。


「あとは魔法についてだけど、それはあとで専門家が教えたくれると思うからいいかな」


 シロはそう言い、話の話題を変えてきた。やはり彼女たちも異世界について興味があるらしく、目的地につくまで質問攻めにされた。

 俺は他人と仲良くするのが苦手な部類だと自負していたのだが、不思議と楽しい時間だった。



 俺たちは談笑しながらしばらく歩き、目的の部屋に着いた。

 木製の扉をシロがノックすると、中から声が聞こえてくる。


「どうぞ」


 しわがれた、老人の声だった。

 ここまで女性キャラばっかだったからか、勝手に巨乳美女を想像していた俺は少しショックを受けた。ここまで恵まれ過ぎたね俺。


 重い扉を開け、中に入る。

 さほど大きくない部屋には学校長などが使っていそうな厳かな机や来客用ソファが置いてあった。実際に校長室入ったことないけど。

 先程話に出たギルド長であろうその老人は大きな椅子に腰掛け、魔法使いのような長い髭を撫でていた。髭ながっ。えっ、なげえ。


「ようこそ、ギルドへ。ワシはコトブキ、ギルド長じゃ。まあ気楽にしてくれて構わんよ」


 この老人はまるで俺たちが来ることを知っていたかのように、用件を聞かずに名乗った。俺たちが日本から来たことも分かっているのだろう。

 内線とかはなさそうだし、これが魔法の力か。

 それと、この世界での名前の概念がよくわからない。苗字はないのかな?でもさっきフルネームで自己紹介したけどなんも言われなかったし。


「それで、まずは君らの名前を教えてくれんかの」


 そして到来俺らのターン。


「涼ッス」

「優太」

「高橋」


 高橋。一人だけ苗字。なんかすごい壁を感じる。


「うむ、では涼君、高橋君、優太君。さっそく質問だが、君たちはこっちの世界についてどれくらい知っているのかね?」


「だいたい把握してるッス。いろいろ説明してもらったッス」


 スッススッスうるさいなこいつ。お前普段もっとまともな敬語使ってたろ。

 そして後ろから誇らしげな鼻息が聞こえた。多分クロだろう。説明してくれたのはシロだが。


「そうか、冒険者とかギルドとかも」

「大丈夫ッス」


 涼が食い気味に答えると、コトブキは「そうかそうか」と言って机の下でゴソゴソする。なにかを探しているようだ。

 取り出したのは三枚の紙だった。兄からの手紙と同じような、少し麻色をした紙だった。


「では君たちは、冒険者になる、ということでいいかの?」


 俺たちは互いに顔を見合わせ、うなずく。

 返事を確認すると、コトブキは指を鳴らす。めっちゃいい音。

 すると先ほどの麻色の紙が宙に浮き、それぞれ俺たちの手元に飛んできた。


「「「おおおおおおおお!」」」


 三人とも叫んだ。魔法である。

 こんな便利に、自在に操れるものなのか。予想はしていたが、改めて目の当たりにすると、なんかすごい。これは今後に期待が持てる。

 涼も隣で「イエスッイエスッ」と興奮している。何がイエスなのかわからないが、その気持ちわかるぜ。


 それからしばらく、コトブキは俺らの興奮が収まるのを待ってくれた。


「この紙に自分の血を一滴たらしてくれ。どこでもよいぞ」


 うん、魔術的なあれだな。多分契約書的な奴になるんだな。うん。

 異世界に来たのだからこういう体験はしてみたいとは思っていた。なんかカッコいいし。

 心が躍る。

 だがしかし、一つ問題がある。

 高橋も気づいたらしい。紙を持ち、親指をじっと眺めている。

 涼は気づいていないらしい。紙を上下左右に動かし「うおおお?おおおお」と声を漏らしている。なんでこいつ興奮してんの?落ち着きを持て、落ち着きを。


 まあそれは置いといて。

 これ、指嚙み切るパターンだ。


 しばしの沈黙。

 誰かなんか言って。そして涼は静かにして。

 あっ、コトブキがなんかニヤニヤしてる。おいじじい、お前気づいてんだろ。針とかの準備はないのかよ。クッソなんか俺から言い出すのはヤダぞこれ。しかしこれでは進まない。何か変化がなければ。変化が――。


 沈黙を破ったのは高橋だった。


 高橋は戸惑いながらも自分の親指を口に当てた。

 それを見たコトブキの顔が少し驚く。

 が、やはり恐怖心はあったのか、すんでのところで思いとどまる。

 しかし俺に電流走る。


 おそらく怖くないわけではないんだろう。しかし、あのニヤついたおっさんに頼りたくないという気持ちで、恐怖心に打ち勝つほどの誇り高きプライドがあったんだろう。

 しかし、直前になって止まってしまった。当然だ。俺たちはそんな世界に憧れはすれど、まさか実際にやる場面が来るとは思いもしなかったのだから。

 それでも、最初に動くというのがどれほど勇気のいることか、俺もよく知っている。


 …ここで、動かないわけにはいかないな。

 高橋、一人でいかせてすまなかったな。お前のその勇気に、俺も乗るぜ。そっちのほうがかっこいいしな。


 俺は高橋にならい、右親指を口に当てる。

 高橋が緊張した顔つきでこちらを見ると、覚悟を決めたのか、キッと目を吊り上げ頷く。

 そして、俺と高橋は指の腹を嚙み切った。


 親指がじんじんと痛む。

 見ると、歪な形の傷口から綺麗な鮮血がにじみ出ていた。なんだっけこれ、動脈血だっけか。心臓から送り出されたばかりで酸化してないヘモグロビンがなんたらかんたら。あれ鉄分だっけ?

 高橋の方も上手くいったようだ。少しこわばった笑顔でコトブキをにらんでいる。

 そんな高橋に気圧されたのか、ぎこちなく口を開く。


「ま、まさかマジでやるとは...若さって怖いわー」


 なんだこのじじい。口開く度になんかキャラが崩れていくんだけど。


「まあな」


 涼しげに応えた。めっちゃ痛いけど。


「グワアーーーッ‼」


 時代劇で聞くような、いやこんなわざとらしい、そしてうざたらしい叫び声が時代劇で聞くわけないか。

 まあとにかく、そんな叫び声が隣から聞こえたのだ。

 涼の左手には先端のとがったクリップが握られており、叫び声とは相反して無駄のない綺麗な半球が指先にできている。

 あんのかよ。そして何故叫んだ。全然痛そうに見えないんだが。

 やはり痛くなかったのか、すぐに気を取り直して血を垂らす。俺と高橋もならって紙に指を押し付けた。グワアーーーッ‼

 すると紙についた血の紅がスーッと消えていき、代わりに紙全体に文字が浮かび上がる。


「これは・・・」


「君らが今までどんな人生を送ってきたのかが書いてある、いわゆる履歴書じゃ」


 ふむ。このギルド協会の内装や服装からあまり厳格な管理や制度はないと思っていたが、思っていた以上にきちんとした組織体制を持っているようだ。


「これでこの部屋でできることは終わりじゃな」


「この部屋で?」


「うむ。次はそれ持って一階の受付のところに行ってもらう。案内は、そちらの二人、頼めるかの?」


 身を乗り出し、クロとシロに問いかける。クロの返事を聞くと満足げにうなずく。「頑張っての」という応援を背に、部屋を出た。


 絆創膏ほしい。

ちなみにギルメン(ギルドメンバー)はもう少しいます。

が、彼女らに会うのはまだまだ先かもです。

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