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非日常的日常(旧)  作者: 長男
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第三話 門出

どのタイミングで改行すべきかまだよくわかりませんので読みづらいかもしれません。ご了承ください。

「朝食何?」

「そば」

「うわ、同じだ」

「運命感じちゃう?」

「いやべつに」


 都心というほどでもないが、しかし日本国内の中では比較的発展しているこのあたりには、人工的に整った庭が付いた一軒家が多い。俺と涼の自宅も例外でなく、少しばかりの影がある玄関に腰かけ、隣り合わせの二軒の間を隔てる隙間の多い柵越しに言葉を交わす。

 内気な新社会人や新入生向けの話題の作り方などを紹介する本の冒頭に載っていそうな、とてもありきたりで日常的な内容だ。

 しかし俺は内心興奮していた。朝食を作っていた時も、荷物の最終確認ををしていた時も。多分、昨日涼と話し合ったときからだ。遠足前日の幼稚園児がその夜によく寝付けないような、そんな感じだ。


 しばらくして車は来た。

 なんとなく、ドラマなどで見るような黒塗りのセダンを想像していた。が、実際にやって来たのは一般的な乗用車だった。まあセダンもリムジンも名前だけしか知らいけど。とりあえず黒塗りだったら全部高級車に見えるからな、俺。

 俺たちは腰を上げ、修学旅行でも使った大きなバッグを持ち近寄る。


「なんか普通」

「通学路とかでよく見るやつ」


 俺も涼も小学生並みの感想しか出なかった。けどギリギリ俺の方が具体性があった。

 薄色の車は細い音を出したまま扉を開く。

 助手席の扉から出てきたのは、厳つい顔と坊さんのような頭を持つ中年男性だった。春の初めとはいえ、こうも天気のいい日は少し目立つ。


「お姉さんじゃねえのか」


 気持ちはわかる。けどそれを口に出すか?普通。

 だが幸い、目の間の男性には聞こえてなかったらしい。彼は流れるような動作で会釈をした。


「おはようございます。池田優太さんと戸田涼さんですね?」


 いかにも社会人といった格好の男性に丁寧な敬語で話しかけられ、少し落ち着かないまま答える。


「はい」「おはざーす」


 こいつはだいぶリラックスしているようだ。羨ましいような腹立つような。


「私は境目担当省の東武神室です。今回はお二方のご協力に感謝します。これからのことは車の中でお話しするので、どうぞご乗車ください」


 そう言って東武さんは後部座席の扉を開ける。カムロって名前格好いいな。

 どちらが先に乗っても窓際になるので大して何も考えていなかったが、涼がうやうやしく促したため俺が先に乗り込んだ。レディファーストでも言いたげな顔だ「レディファースト」言いやがったコイツ。次いで乗り込んできた涼を足蹴にし、俺は絵柄のついた窓際のスイッチを押す。そういえば、車に乗るのは久しぶりだな。



「では行きます」


 そして車は『境目』へと動き出した。


東武さんの名前は彼の頭部に由来します。

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