一章 使徒08 - 使徒誕生
異世界クラフト 一章 使徒08 - 使徒誕生
リィートは大切そうにボールペンをポケットの中に仕舞った。
こっちの世界では、それ一つしかないわけだしそんなものだろう。
それよりもだ。
俺には確認しなくてはならないことがある。
「リィート、お前は俺の所有物となった。つまり、身体と生命を含む存在の全てが俺の管理下に置かれることとなる。それはすなわち、俺の持つ力を極限まで限定された状態でだが、発現できるということだ。それが、どういうことかわかるか?」
返ってくる返事がどういうものになるのか分かった上での質問だった。
「い、いいえ。わかりません」
だろうな、と思いながらも、そしらぬ顔で俺は続きを話す。
「今から、リィートの体を俺が直接操作する。何が起こるか、その身で体感しろ」
偉そうに言ってはいるが、もちろん俺にとっても初めての体験だ。
だが、所有者としては舐められてはいけない。
リィートにマーカーを設定すると、俺の持ち物であることを示すアイコンが追加されていた。
マーカーからメニューを開き、直接操作の項目を選択してさらに操作方法の中から音声操作を選び設定完了をする。
「あっ、う……」
リィートは小さく声を上げた後、すぐに黙る。
体が急に動かなくなったことに驚いて声を上げようとしたのだろうが、俺のコントロール下に置かれているので声を出せなくなってしまったのだ。
「言葉は開放する。好きに話せ」
ある程度の意思疎通ができないと、後の説明がめんどくなりそうなので、とりあえず会話だけは出来るようにしておく。
「か、体が動きません……えーっと……」
そう言えば、俺の名前をまだ教えていなかった。
「サトウ・ハジメだ。ハジメと呼べ」
俺が名前を教えてやると、
「ハジメさま、体が動きません。どうなっているのですか?」
すぐに質問してきた。
「言っただろ、俺が直接操作すると。お前の体は、お前の意思に関係なく俺の指示通りに動くようにしてある。とにかく今は、その体で何が出来るか体感するんだ」
もちろん、このモードには別の使用目的もあるが、今は触れる必要はないだろう。
「はい、わかりました、ハジメ……さま?」
恐る恐ると言った感じで、リィートが言った。
正直、これまでの人生の中で、これほどの美人からハジメさまとか言われたことはないので、それだけでどこかに魂がとんでいきそうな気がしたが、ここは堪える。
なぜなら、カッコ悪いからだ。