二章 失われた歴史と未来と24 ― 再び宮廷へ……
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と24 ― 再び宮廷へ……
カラン・クゥリが黒装束の頭部をはぐと、坊主頭をした男の顔が現れた。
いたって平凡そうな顔だが、見開いたままの目だけではなく、耳と鼻からも血が溢れ出している。
なんとも恐ろしい技だった。
完全に無手の技だが、これならば武器を持とうがもつまいが何も変わるまい。
それに、どれほど早く動けようと、カラン・クゥリには通用しないこともわかった。
それどころか、未だこの老人の底が見えない。
おそらくこれでは、あのシヴィラであっても勝つことは無理そうだ。
この老人に勝つ手段は、技で上回るしかないのだろう。
むろん、俺とリィートは別であるが。
「これは、黒きアサシンとして名高いロウッツのようですな。魔族の王女が失敗した時のための予備として用意していたようだ。敵はかなり本気になっていると見える。儂のことはご覧のとおりなんら問題ないので、そちらの方は急がれた方がよいですな。特別な移動手段があったにしても、日があるうちに宮殿に赴いたほうがよろしかろう」
何事もなかったかのように、平然と話しけてくるカラン・クゥリに俺は少し驚いた。
「移動手段があると、なぜわかられた?」
俺は、宿からここへは歩いてきたし、これまでの会話の中でそんな話は一言もでていない。
「おや、儂をからかわれるおつもりか? 昨夜魔族の王女を倒し、その後ティータ殿から紹介状をもらってきたとなれば、なんらかの特別な移動手段がない限りそのようなことはでき申せぬ。そうではありませぬかな、サトウ殿」
確かに、指摘されれば見ればそのとおりである。
俺はどうやら肝心なところが抜けていたようである。
「ご慧眼いたみいる」
ただ、そのことを最後まで一切触れなかったのは、なんと老獪なことだろう。
話がこの流れにならなければ、カラン・クゥリはこのことを一生話すことはなかったはずだ。
そういうことのできる人物であるということである。
「それでは、朗報に期待しておりますぞ」
カラン・クゥリが別れを告げる。
俺がリィートに目配せをすると、察したリィートが俺の右腕を取った。
「では、また」
俺は、短く別れを告げて、王宮の近くへと転移した。
<二章 了>




