二章 失われた歴史と未来と23 ― 暗殺者VSカラン・クゥリ
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と23 ― 暗殺者VSカラン・クゥリ
黒装束に身を包み、顔も黒い布ですっぽりと覆っている。
目のあたりだけが空いており、そこから瞳だけが見えてこちらを覗いている。
俺とリィートはすでに戦闘モードに移行しており、時間の流れはゆっくりと感じられるようになっていた。
だが、そいつはその時間の流れで普通の速度で動いている。
俺としては、少しばかり驚いてはいたが、そのことは、黒装束の敵も似たような驚きだったらしく、明らかにこちらを凝視していた。
だが、それもしばしのこと。
すぐに高速で移動を始める。
俺の体感時間はそれに合わせてステップアップしているので、逆にゆっくりと感じられるようになった。
ただし、黒装束の敵が狙っているのは俺ではなく、明らかにカラン・クゥリである。
俺とリィートがいない場所を狙って距離を詰めてくる。
リィートがそこに割ってはいろうとするが、俺はそれを止めた。
カラン・クゥリの目は鋭くはっきりと敵を捉えている。
何かを仕掛けるつもりか、それとも誘っているのか。
そこに興味が湧いたからだ。
速度は明らかに圧倒的な違いがある。
俺はそれを一段上の速度から見ているからよく見える。
だが、カラン・クゥリにもはっきりと見えていることもわかる。
圧倒的な速度差で、近づく黒装束の敵は両手にシミターを手にしている。
どちらで刺しても、確実に命を奪える武器だ。
それが左右同時に動き、挟み込むようにカラン・クゥリの体に吸い込まれる……かのように見えた。
だが、現実には届かない。
黒装束の敵とカラン・クゥリの間に、まるで障害物のように左の拳が置かれていいたからだ。
位置は心臓のあたり、その拳に向かってトップスピードのままでぶつかった。
俺が見ていた限り、カラン・クゥリの左拳は目に止まらぬような速度で動いていたわけではない。
予めその場所に置かれていて、黒装束の敵が自ら突っ込んでいったのだ。
心臓を直撃した一撃は、瞬間的にその動きを止めてしまう。
動きの止まった黒装束の敵の頭を、カラン・クゥリが両手を使い拝むような形でゆっくりと叩いた。
すると、黒装束から覗いている瞳から血が溢れだす。
そのまま、糸が切れたマリオネットのように、その場にかくんと膝から崩れ落ちる。
カラン・クゥリは両手で挟み込むように敵の頭を叩くことで、強烈な振動を与えたのだ。
脳は頭蓋骨にたたきつけられて、地面に落とした豆腐みたいになっていることだろう。
おそらくは、即死だったはずだ。
自分が死ぬことを認識できたかも怪しいものだ。




