一章 使徒04 - 同意書
異世界クラフト 一章 使徒04 - 同意書
俺にとっては非常にゆっくりなので、簡単に避けることができる。
グリフィンの頭が地面に落ちてた所で、俺の戦闘モードは解除され体感的な時間の流れは通常モードに移行した。
そして、俺は生き残ったエルフと向き合う。
「よう、元気か?」
俺が日本語で声をかける。
「助けてくれたの?」
返事も日本語で帰ってくる。
それも当然で、俺が『コズミック・スフィア』内の統一言語を日本語に設定したからだ。
なので、この惑星以外のどこの星に行っても日本語がそのまま通じる。
ただし、方言までは規制していないので、話が通じにくい場所も存在しているようだ。
「そうだ。感謝しろ」
俺は堂々と言ってやった。っていうか、一度は言ってみたかったセリフである。
「……感謝はしてるけど、随分と偉そうね、人間」
明らかに俺のことを不審そうな目で見ながら、そんなことを言っている。
「個人的な感想はいいから、こいつに名前を書け」
『ゴッド・マザー』から出力した書類をリィートに向かって突きつける。
「なんです、それは?」
俺の突きつけた書類を受け取ろうともせず、さらに不審度を強めながらリィートが聞いてきた。
「単なる同意書だ。これに名前を書けば、お前さんは俺の所有物となり管理下に置かれる」
正確には『ゴッド・マザー』の管理下に置かれることになるのだが、話がややこしくなるので、そこは端折る。
「はぁ? 誇り高きハイ・エルフであるわたしに、人間の奴隷になれと言うつもりですか?」
予想はできたが、勘違いしているようなので、俺は簡単に説明してやる。
「奴隷ではなく、所有物だ。俺の所有物以外のありとあらゆる存在は、俺がこの宇宙から帰還した瞬間に復元される。つまり、お前さんはそこのグリフィンに食われるわけだ」
俺的にはかなりわかりやすく説明したつもりだったが、リィートの表情からさっするに、まったく受け入れるつもりはないようだった。
「正気ですか? グリフィンから助けてくれたことには感謝しましょう。奴隷と所有物の違いはわかりませんが、どちらにしても、真っ平ごめんです。そもそも、すでにそのグリフィンは死んでいるではありませんか? どうして、私が食べられるというのです?」
それがリィートの回答であった。
一見、まともなことを言っているようであるが、無知というのは恐ろしいものである。
自分の置かれている状況というものが、まったく理解できていない。