二章 失われた歴史と未来と21 ― ファリス王女
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と21 ― ファリス王女
最後の言葉を言いづらそうにしていたので、俺が引き取る。
「一年前に病に倒れたと」
俺の言葉に、カラン・クゥリは黙って頷く。
正直言って、カラン・クゥリにここまで言わせる人物に会いたくなってきた。
むろん、若き王女ということもあるが、それ以上にその人となりに興味が湧いてきたのである。
俺の目的を達成するために、最適な人材ではないのかと思える。
是非にでも会う必要があるだろう。
それも早急に。
ただし、カラン・クゥリと同じように、直接会ってみなくては最終的な判断は下せない。
「ならば……」
俺は話す。カラン・クゥリに向かって。
カラン・クゥリが俺の顔を見るのを待って、話しを続ける。
「ならば、話しは簡単だ。ファリス王女の病が回復すればいい。それだけで、現在の状況は随分と好転するはずだ」
俺の言葉を聞いたカラン・クゥリに、また殺気が生まれる。
横にいたリィートが腰を浮かしかけている。
先ほどに比べて数倍するような殺気であった。
俺は、リィートの行動を目で制して、カラン・クゥリの言葉を待った。
「そんなことが可能であれば、この老体の身などどうなろうが構わぬ。それが叶うならば、神であろうが悪魔であろうが、この命を投げ出してご覧にいれよう。だが、徒や疎かにそのようなことを口にするようであれば、そなたであろうと切らねばならぬ。いかなる了見か、お聞かせいただきましょうぞ」
吹き付けてくる殺気には、怒りだけではない何かがはっきりと感じられたが、俺はあえてそれを言葉にしようとは思わない。
そういう想いもあるべきだと感じたからだ。
「俺はたとえどういう病であれ、回復させることが可能だ。ただし、そのためにはいくつかの条件が存在する」
俺ははっきりと言い切る。
「それは、本気で言っておられるのか?」
カラン・クゥリはまったく殺気を緩めることなく俺を問いただす。
「むろん」
俺は短く頷く。
「では、その条件をお聞かせくだされ」
言葉にしてはそれだけであったが、言外に事と次第では生かしてはおかぬ、と放たれる殺気がはっきりと物語っている。
「まずは、直接に会うこと。俺が会って話し、その人となりを判断する。だが、一番重要なのはその後だ。俺が決めたとしても、本人の同意が必要となる。具体的に言えば同意書にサインをもらえないようならば、この話しを成立することは不可能だ」
横でリィートが複雑な表情をしている。
どうやら気付いたようだ。
これは、俺の第二使徒を生み出そうという話しである。




