二章 失われた歴史と未来と20 ― 舞台裏
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と20 ― 舞台裏
「サリド・ハズ・カーン王子。この国の、第二王位継承者にあらせられる」
苦虫を噛み潰したような顔をして、カラン・クゥリがそう告げた。
一方俺は、ただ頷いた。
というのも、この手の話しは良くある話しだからだ。
国が滅びる時には、内側からだと相場は決まっている。
「それが、ここに来た理由である、と。返り討ちにできればそれでよし。失敗しても、王都に被害は及ばない。懸命な判断ではあるが、現状解決の役にはたたない」
けっこうな批判になることを承知のうえで、あえて俺は言った。
ここで終わるようならともかく、この先につなげるためにはそれだけではダメだった。
「ズバリといいなさる。ただ儂は、初めて弓を取り戦場に立ちし時より五十年、ずっとこの国の禄を食んできた身なれば、あえて王族の方々にも口やかましく接してきもうした。それでも、現王とその王位継承者が結託して我が身を狙ってくるとなれば、さすがにいかんともし難いと覚悟を決めており申した」
それはそうなるよなとは思ったが、あえて口には出さず、新たな質問をする。
「いま、第二継承者とおっしゃったが、それならば第一継承者はいかがなされている?」
調べればすぐに確認できることだが、意図的にそれはせずにあえて質問をする。
「ファリス・ハズ・リム王女殿下は現在病床に臥っておいでになられる。もう一年以上にもなり、病状は日増しに悪化されており明日おも知れぬ状態だ。もう誰もファリス王女殿下に対して何かを期待する者はおらぬでありましょう。残念なことではありますがな」
俺は、それを聞いて目を細める。
今、カラン・クゥリの口から率直な意見が聞けた。
それこそが俺の聞きたかったこと。
データー上からはけして確認できないことだ。
「その口ぶりからすると、ファリス王女というのは優れたご見識をお持ち方とお見受けするが?」
俺の質問に、カラン・クゥリほどの漢が目を伏せる。
おそらくは、ずっと自身の中に言いたいことを沈めてきたのであろう。
涙こそ流してはいなかったが、その想いはそれだけでも痛いほど感じられる。
「ファリス王女殿下は聡明なお方で、しかもまっとうなご見識をお持ちの方であらせられた。父王陛下におかれましても、一歩も引くことなくまっすぐご正論をぶつける胆力をお持ちで。もちろん、まだお若くおいでなので、早急過ぎるきらいはございましたが、それもまた魅力になっておられた。サリド王子は妾腹の子ということもあり、ファリス王女殿下が王座につくことは間違いなきことと誰もが思っていたのですがな……」




