二章 失われた歴史と未来と18 ― 本心
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と18 ― 本心
受け取った書類をパラパラとめくる程度だが、軽く目を通しただけでカラン・クゥリが唸っていた。
「内容に関しては、どうぞそちらで判断を。俺の話したことが現実のものとなることがはっきりと理解できるはず」
俺としては、内容をじっくりと検討している時間がもったいなかったので、先を促すべくそう言った。
「承知いたした。あなたの話したことは前提条件として一旦受け入ることといたそう。その上で、この老人に何をお求めか?」
カラン・クゥリが聞いてくる。
受け入れたといったにもかかわらず、抜身のような鋭い視線に変化はない。
俺は本心を直球でぶつけることにする。
この老人に、回りくどい話し方は逆効果にしかならない。
「できる限り早急に、この国を立憲君主制に移行させるべきだ。議会を作り、臣民からの代表者と貴族からの代表者で議論を尽くし法を定め、法のもとに国家を運営していくようにする。今のままの体制では、この国の未来はない。俺はそれをあんたに、唆すためににきた」
もちろん俺の最終的な目標はそんなところにはない。
ただ、産業革命を起こすためには、これは必須の前提条件であった。
民間企業が育たなくては、経済が拡大することはないからだ。
もちろん、他にも色々となすべきことはあるが、まずはここからである。
「とすると、あなたは謀反を唆すために来られたということですかな?」
カラン・クゥリから恐ろしく強烈な殺気が放たれる。
正直、いつ戦闘モードが発動しても不思議ではないレベルだ。
「そうではない。国王には今の身分のまま居てもらう。ただし、政治に関する実権はすべて手放していただき、国会へと権限を移行する。どのみち今のままなら国ごと消えてしまうだけだ、それとどちらがいいかという選択をするだけのこと。いかがなされるか、ご判断を」
俺は殺気を受けながら、カラン・クゥリに詰め寄る。
「その話、断ったらそなたはどうなされる?」
カラン・クゥリは逆に質問してきた。
俺の覚悟を問おうというのだろう。
「この国を見捨てるだけのこと。滅びる国では何事もなしえないからな」
はっきりと言い切る。俺にとって必要なことは、自分の思い描く未来を目指すこと。自ら滅びようとしている国に拘るつもりはない。
「ふっ。それもそうですな。では、あと一つ教えてくだされ。なぜ、拙者にこの話を持ち込まれたのかな?」
その質問に関しては、もっと早くにあるだろうと予測していたが、このタイミングできたか。




