二章 失われた歴史と未来と17 ― 国にかかる暗雲
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と17 ― 国にかかる暗雲
やはり、シヴィラの名前はすぐに特定されてしまった。
特に隠すつもりもなかったのだが、それにしても早々にバレ過ぎだろう。
それはともかく、カラン・クゥリがしてきた質問は、当然と言えるものだったので、答えておく必要があるだろう。
「シヴィラは未来永劫俺の支配下にある。この話しは誰にもするなと命じてあるので、本人の意思とは関係なく話すことは出来ない。つまり、この話しがシヴィラ経由で漏れることを心配されるなら、その点に関しては無用に願いたい」
俺は断定的に言い切った。
シヴィラの個人的な事情からも、その心配はなさそうなのだが、そこの所は伏せておく。
俺自身があまり触れたくなかったからだ。
考えるだけで気分が悪くなる。
「ふむ。そういうことならば、信頼申し上げるといたそう。では、そちらの要件をお聞きしましょうかな」
カラン・クゥリが話しの水を向けてくる。
さすがに長年要職を務め上げた人物である。この辺りは実務的な考え方ができるようだ。
ただ、本題に入る前に、まだ話しておかなくてはならないことがある。
「俺の要件に入る前に、もう一つの事実を伝えておきたいのだが、よろしいか?」
俺は確認を取るように言ったが、ここに来て断られることはないと確信していた。
「否、とは言えんでしょうな、さすがに」
カラン・クゥリもそう言った後笑った。
「あと一年と経ずにアヴァルランド王国は滅亡する。国土は二分され、魔人国と隣国タイズランド公国による分割統治を受けることになる。ただし、このまま手を拱いていれば、という条件つきで」
俺は歴史書を読み上げているような口調で言った。
じっさいそうであったし。
「それは……どうも、冗談に聞こえませんが、そうだとしても笑って済ませられるような話しではないですな」
カラン・クゥリの視線が、まるで切り結ぶ真剣のようだ。
俺が創造主でなければ、震え上がっているところだろう。
「もちろん、冗談ではない。今この場で詳しい話しは差し控えるが、後ほどこの書類に目を通されるといい。現在進行形で進んでいる陰謀がつぶさに書かれている」
俺はこの国に関係する情報を『ゴッド・マザー』から出力させて、そのままカラン・クゥリに手渡した。
もちろんその内容は全てリアルタイムに行われている事実である。
ただし、その中の情報には若干未来の出来事も混ぜてあるのだが、それを読んで検討する頃には現実のものとなっているだろう。
「うむむ、これは……」




