二章 失われた歴史と未来と13 ― 具体案
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と13 ― 具体案
これだけ美しく、宮廷魔術師という身分もありながら、なぜ独り身なのかということにもこれならうなずける。
これだけ非の打ち所のない完璧無比の女を妻にすれば、男は息苦しくてたまらなくなるだろう。
まぁ、中にはそれがいいと思う男もいるかも知れないが、たぶん俺には無理だ。
などと俺が勝手な妄想を抱いていると。
「そうですね。私の師ということにしましょう。エルフではありませんが、強力な魔術師なら老化を遅らせ、エルフ以上に長生きをする人間もいると聞きます。それに、私の師ということになれば、ぞんざいな扱いをされることもないでしょうし、リィートがいて話を合わせてくれれば説得力も増すはずです」
ティータの言葉を聞いて、リィートも頷いていた。
どうやら最適解を見つけてくれたようだ。
次善の案よりだいぶマシな結論に落ち着いたようで助かった。
ちなみに次善の案というのは、俺が出向くのではなくカラン・クゥリを適当な場所に転移させてそこで話すという力技であった。
「ありがとう、助かる」
俺が礼を言うと。
「いえ、これしきのこと、先ほどお教えいただけたことに比べれば、幾ばくも無きこと。それに、我らが主である貴方様のお役にたつことができれば、それだけでも光栄にございます」
そう言って、ティータは完璧という肩書のついた名刺を作ってやりたくなるくらい見事な礼をしてみせる。
「それでは、書類をお作りしますので、私の執務室にお越しください」
そう言って、ティータはこの部屋を出ていこうとしたので、俺はリィートに目配せをして床の上に転がったまま気持ちよさそうに寝ている荷物を拾い上げさせて、四人まとめてリィートの執務室に転移した。
「こ、これは?」
転移にはまったく予兆もなにもない。
ただ、今いる場所が変わるだけだ。
そのことに、ティータは驚いていたが。
「なるほど、こうやってあの場所にも来られたのですね?」
すぐに察して、最初の疑問に自ら答えを出した。
「そういうことだ。それでは、よろしくたのむ」
俺の言葉に軽く頭を下げてティータは動き出す。
書類の作成には慣れているのだろう、気持よい動きで瞬く間に書簡ができてきた。
「この書類の内容は内密の話しがある旨を匂わす程度にとどめて、ただの紹介状となっております」
簡単な説明をしながら、ティータが俺に書簡を手渡した。
「助かる。礼と言ってはなんだが、これ預けよう。どう使うかは、君の勝手だ」




