二章 失われた歴史と未来と12 ― 目標
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と12 ― 目標
おそらくは、半ば察しがついているのだろう。
ティータはそんな言い方をする。
もちろん、俺が黙っているはずもなく。
「アヴァルランド王国国王ネリフ・ハズ・カルフ三世。君の雇い主だな」
俺はあっさりと告げてしまう。
すると、ティータは苦笑を浮かべていた。
「なるほど、色々と厄介そうな事態になっていますね。主はなぜにこのような事態に介入されることになされたのでしょうか? 失礼ですが、なんの建設的な状況になりそうもないと思いますが?」
頭の良い女と話すのは本当に気持ちがいい。
こちらの話したかったことに先んじて質問をしてくれる。
「結論から先に言うと、俺の影響力が及ぶ国が一つ欲しかったからだ。それに、本格的にこの国に介入するかどうかは、まだ決めていない。すべては、元老院であるカラン・クゥリと直接会って決めるつもりだ」
俺はこの星で産業革命を起こすつもりでいる。
そのためには、どうしても法整備が必要であり、そのための前提として立憲君主制へと政治体制を変更してもらう必要がある。
国王の独断で決められるような体制の下では、飛躍的な民間産業の拡大は不可能だからだ。
もちろんそのためには、俺が表にでるわけにはいかない。
国王の代わりに俺がなってしまっては、結局のところ何も変わらないからだ。
俺はこの世界で好き勝手できるが、それは個人的な意味合いでしかない。
社会そのものの未来を決めるのは、所詮人々の理念や理想それに欲求欲望といったもののせめぎあいなのだ。
俺が介入するとしたら、そういうところにならざるを得ない。
砂漠を渡る風が、どんな地形をつくるかなんて、結局風には分かりようがないように、俺の関与がどんな未来をつくるかは俺の意思とはまた別のところにある。
俺個人はこの宇宙においてできないことはないが、俺が与えた影響が俺の意思どおりになるという保証はない。
そんなことは、俺でなくても普通に生きていればわかることだ。
当然、この世界に存在している神々であってもそれは変わらない。
いくら力を持った神であろうと、所詮は人の祈りの受け皿にすぎないのだから。
だから、俺はカラン・クゥリと会って話す必要があるのである。
「わかりました。それでは、私がカラン・クゥリ様に向けて紹介状を書きましょう。ですが、さすがに身分は別に必要ですね。創造主などと名乗るわけにはいかないでしょうし」
ティータは俺が言おうとしていたことを先回りして検討を始めた。




