二章 失われた歴史と未来と11 ― 核心へと
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と11 ― 核心へと
実によく出来た使徒である。
「俺はただの創造主であって神ではない。俺にへりくだる必要はないさ。使徒は別だがな。そして今俺の使徒はリィートだけだ」
神は信仰が力となるが、俺にとってはそんなの関係ない。崇めたてられても迷惑なだけだ。
ただ、使徒はいわば俺の一部と言ってもいい存在だ、同列に論じることはナンセンスである。
そこの所は間違いなくリィートが一番理解している。
おそらくは俺よりも。
俺の言葉を聞き、誰にも気づかれぬくらい小さく微笑んだことが何よりの証だった。
「寛大なるお言葉、いたみいります」
ティータは立ち上がり、俺に向かって一礼する。
へりくだる必要はないと言ってあるのだが、なんとも律儀なやつである。
ただ、俺としてはそろそろ話しを先に進めたい。
ここにある『アヴィル』がいかにとんでもない魔法兵器であっても、所詮は過去の遺物だ。俺は未来のためにここに来ている。
「今現在、ハッシュビルの街を一人の元老院が訪れていることを知っているか?」
俺はいきなりそう切り出した。
「ハッシュビル……そういえば、カラン・クゥリ様が国境近くの街を訪れるという話をされていましたね。そのことでしょうか?」
頭がいい女との会話は話が早くて助かる。
「そうだ。そのカラン・クゥリと誰にも知られず密会がしたい。そのためのつなぎを頼めないだろうか? 無理なようなら断ってくれてもかまわん」
俺はいたって率直に希望を伝える。その上で、ことわりもいれておいた。
俺にとっては、他にも方法があるので、無理に頼む必要がないからだ。
「よろしければ、理由をお聞かせいただけますか?」
ティータは当然の要求をしてきた。俺としては、どの道話すつもりであったから、かえって都合がいい。
「昨夜、ハッシュビルの街を襲撃しようとした魔族がいた。俺とリィートでふせいだが、そいつの目的は強力な魔法で街ごと元老院を消滅させてしまうことだった。ちなみにさっしはついていると思うが、実行犯はそこで寝ている馬鹿娘だ」
俺が顎で示すと、ティータは苦笑を浮かべる。
「なるほど。そのことをカラン・クゥリ様にわざわわざ御自らお伝えになりたいと?」
ティータは察したようにそう言ったのだが。
「ことは、そう単純ではない。問題なのは、こいつの雇い主だ」
俺は、気持ちよさそうに床の上でのびているシヴィラのお尻を、靴のつま先で軽く蹴りながら言った。
「ほう? それは、私が聞いても大丈夫な人物なのでしょうか?」




