二章 失われた歴史と未来と09 ― 超古代の遺産
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と09 ― 超古代の遺産
俺はそこで話しを切った。
というのも、驚きのあまり、ティータが目をむいていたからだ。
「な、なぜそんなに詳しく知ることができるのです? 私は研究を続けてエルフに伝わる伝承の中で『アズィス』と呼ばれるものが、かつて『アヴィル』と呼ばれていて、それが魔法兵器である事実を突き止めました。たったそれだけで、五十年の時を費やしています。その調査の中で、この国の王宮の地下に、封印されている事実が判明しました。それでわたしは、宮廷魔術師となり誰にも気づかれることのないように、細心の注意を払いながら『アヴィル』の調査研究を行ってまいりました。でも、未だに『アヴァル』の正体には至っておりません。なのに、あなたはわたしが突き止められなかったことも含めて、随分とたくさんのことを知っている。あなたは……誰なのですか?」
またティータの質問はそこに戻ってしまった。
でも、俺の話しは途中だ。
「まだ続きがある。この魔法兵器『アヴィル』は、『イゼラ・オーゼ』に反抗する最大の勢力であった魔族に対して使用される予定だった。魔族には『アヴィル』のことを知らないし、また理解もできないから気にもしていなかったが、ここで人間族が関わってくる。当時魔族の攻撃によって絶滅寸前にまで追いつめられていた人間が、エルフの内通者から『アヴィル』の存在を知り『イゼラ・オーゼ』に忍びこんで『アヴィル』を強奪してしまった。だが、兵器の起動方法を知らなかった人間には使用することができない。そこで、地中深くに埋めて、誰の手にも届かないようにした。仮に使用されたとしても、地中深くにあれば影響は無いだろうと思ったんだな。なんの知識もないままに、それをやってしまった。ところが『アヴィル』は、理論上空中にあるより地中にある方がいっそう伝搬率が高まり、より広範囲に被害が広まるようなシステムであった。しかも、兵器としての性質上、起動は『トリガー』による遠隔操作で行うようになっていた。『アヴィル』を盗まれたエルフ達は、盗みだした不届き物ごと反抗する魔族を殲滅するために『アヴィル』を起動してしまう。開発者である『マイノ・ロウィング』博士は止めたが、その警告に耳を貸すものはいなかった。起動した『アヴィル』は強い魔力を持った生命体から優先的に爆殺し、真っ先に魔族、次にエルフ族、最後に人間族を殺した。爆殺を免れたのは、有効範囲の外に居た者と魔力を体内にまったく持たなかった存在のみ。後は……」




