二章 失われた歴史と未来と08 ― シヴィラ乱入
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と08 ― シヴィラ乱入
まぁ、そうなるわなぁと思いながら俺が聞いていると。
「へん、あんたもそう思うだろ? けどね、このクソ女。たかがエルフのくせに、バカみたいに強くなってんだよな。このあたいが、コテンパンにやられたんだ。あんたじゃ、手も足もでないに決まってるよ」
横からシヴィラが口を挟んできた。
すると、ティータはシヴィラに顔を向ける。
「あなたのことは知っています。魔族のプリンセス、シヴィラさんですね。たしか、あちこちでアブナイ仕事を請け負っているとか。あまり良い噂はお聞きしませんが、相当な力をお持ちなのは間違いないのでしょうね」
どうもシヴィラの悪名は各所に鳴り響いているようだ。
こいつを頻繁に連れて歩くのは、今後考えなおしたほうがよさそうだ。
「あったりめぇだろっ! あたいを、誰だと思ってんだ!」
だからシヴィラだろ、というツッコミはおいといて、とりあえずティータの関心は俺に向いたようだ。
「サトウ・ハジメさまとおっしゃいましたか。あなたのことが、まったくわかりません。一体あなたは何者です?」
ティータの視線は圧力を感じるくらい、強く俺に向けられている。
「話してもいいが、信じるのか?」
俺は根本的な質問をしておく。
信じないだろうと断定しても構わないが、リィートの手前表現を抑えたのだ。
「あなたの話す内容次第ですね」
そうだろうな、という返答が返ってきた。
俺は代わりに何か発言しようとしたリィートに向かい、右手を上げて押しとどめる。
その上で、話し始める。
ただし、直接説明をするのではなく、かなり大外からの角度をつけた説明だ。
「その装置は『イゼラ・オーゼ』において『アヴィル』と呼ばれていた。作られたのは、ちょうど今から12665年前だ。開発に携わったのは、当時魔法応用学における画期的な技術革新を成し遂げる発明をしたエルフ『マイノ・ロウィング』博士。古来、魔法力は固有の生命における内在する力と考えられていたが、その理論を根底から覆し、特定のシステムを構築することで、ほぼ無尽蔵に入手できるエネルギーであることを証明してみせた。『アヴィル』はその理論を応用することで生まれた、生命体破壊兵器だ。具体的には、魔力を有する生命体の魔力を無尽蔵に増幅させてしまう。そうすることで、魔力を体内に抱えきれなくなった生命体は内側から破壊されることになる。早い話しが、無差別大量殺戮を目的とした兵器だな。しかも、有効範囲内にいる魔力を有する生命体には防ぐ手段がない。なにしろ、自分の体が爆弾そのものになるわけだから、使用されたらそれで終わりだ。死ぬ以外の選択肢は残されていない」




