二章 失われた歴史と未来と07 ― ティータ登場
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と07 ― ティータ登場
俺が告げると同時に、部屋のドアが開いた。
そこに立っていたのは、リィートと比べても甲乙つけがたい程の美女である。その美女こそが、リィートの従姉妹にして宮廷魔術師であるティータであった。
部屋が明るく、そして俺たちの存在に心底驚いている様子で硬直していた。
二三回呼吸するくらいの間を開けて、俺たちに向かって誰何してくる。
「あなた達、どうやってここに入ったの!?」
その質問にどうやって答えたものかと俺が迷っていると、リィートが先に答えていた。
「その質問に答える前に、ここで何をやっているのかお答えいただけますか? お姉さま」
すると、どうやら従姉妹の存在に気づいたらしく、ティータの視線がリィートに固定される。
「まさか、リィートですか? なぜ、こんなところに? それより、どうしてここの存在を知ったのです?」
ゆっくりと部屋の中に入りながら、ティータがさらに質問をしてくる。
互いに質問しあう形になっているが、ここは口出しせずになりゆきを見守っていたほうがいいだろうと俺は判断を下す。
「ここに来たのは、お姉さまにお願いしたいことがあったからです。ここに来たのはたまたまですが、ついてみたらソレがありました。実際にこの目で見るのは初めてですが、伝承の中に伝わる災厄の箱『アズィス』ですね? かつて、それによってエルフ文明は滅びました。そんなものをどうしようと言うのです?」
もちろん俺は来る前に知っていたが、そこは黙っておく。
「どうやって入ったのかには、答えてもらっていませんが、いいでしょう。あなただけには見せてあげます。ですが、その前にそちらの二人はどなたですか? 一人は魔族、それも王族の女性。ただ、男性の方はまったくわかりません。人間のように見えますが、どこか違うようです。教えていただけますか?」
ティータは『アズィス』のすぐ横に設置してある魔道具の前に移動しながら話しかけてくる。
さすがに、俺とシヴィラのことを無視するつもりはないようだ。
「さすがですね、お姉さま。そこの女性はシヴィラさん。魔族の王女です。そして、こちらのお方が、我が主サトウ・ハジメさまです。今の私は主に仕える使徒なのです」
リィートは簡単に俺たち二人のことを紹介してくれる。
ただし、この紹介は色々と波紋を生じそうだ。
「何を言ってるのです? 正気ですか、リィートさん?」




