二章 失われた歴史と未来と06 ― 地下へ
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と06 ― 地下へ
ちなみに手をつかむ必要はなかったのだが、美女と見た目美少女の体に触れることは俺にとってはやぶさかではない。
転移した直後、世界は暗黒だった。
完全に閉ざされた空間にいるのだから当然ではある。
「光よ」
リィートがライトの呪文を唱えると、空中に光源が出現する。
周囲は明るくなったが、部屋の端の方はぼんやりとしかわからない。
俺はすぐに、この部屋の明かりを確保するためのスイッチの位置を検索する。
右手の方に、マーカーがセットされた。
入り切りは魔力で行うらしく、魔法を使ったことのない俺だと、ハッキングを行う必要があり面倒なのでリィートに命令する。
「リィート、ここにスイッチがあるから、入れてみろ」
すぐにリィートが近づいてきて、魔法装置に手をかざすとすぐに部屋中が明るくなった。
どうやら、天井全体が照明となっているらしく、部屋全体がまんべんなく明るい。
広い部屋の中には、あれこれ細かい道具が置かれているが、どれもこれもティータが持ち込んだ魔法具のようだ。
ただ、部屋の中央部に鎮座している棺のような箱は、古代エルフ時代からそこに置かれていたもので、それこそがこの部屋の核心部分であるようだ。
「なぁ、ハジメ。あれから、ヤバイ感じがビシバシ伝わってくるけど、なんなんだよここわ」
それまで調子に乗りまくっていたシヴィラが、急に弱気になった様子で俺に聞いてくる。
俺は、その箱がなんであるのかすでに確認できている。
「そいつが、古代エルフ文明を滅亡に導いた元凶さ。そして、この場所はその力を封印しようとした棺だな」
すでに伝説となっているが、さすがに古代エルフ文明のことは知っているらしく。
「ええっ? ヤバイじゃん、超ヤバイじゃん」
あのシヴィラが本気で怯えていた。
より魔的な存在である魔族、クズとは言っても純血の王族であるシヴィラには、その危険さがリアルに感じられるらしい。
ちなみに、俺にはまったく何も感じられない。
「そんな場所で、ティータは一体何をやっているのでしょう?」
シヴィラと同じように危険を感じているのだろう。
リィートがかすれたような声で聞いてきた。
「すでに、察しはついているのだろ? おそらく、そういうことだろうさ。それに、確認なら本人にすればいい。もう、ドアの前にいる」




