二章 失われた歴史と未来と04 ― リィートの従姉妹
異世界クラフト 二章 失われた歴史と未来と04 ― リィートの従姉妹
「リィート、食事が終わったら元老院と会いたいんだが、どうすればいい?」
それは今日一番最初の予定だった。
「わたしには人間の王族に知り合いはおりませんが、ちょうどこの国の魔術師として、わたしの従姉妹が働いております」
黙ってはいるが、そのことはプロフィールで確認した上で聞いている。
「ほう?」
俺は水を向けるように話す。
「ティータと申しますが、よろしければ話しを通してもらいましょうか?」
俺の想定通りの答えが返ってきた。
「そうして貰えるとたすかる」
知らないフリを続けながら、俺が礼を口にすると。
「ありがとう御座います。このリィート、ハジメさまのお役に立てて、望外の喜びにございます」
リィートはその美しい顔に、満面の笑みを浮かべて喜びの気持ちを口にした。
何もかも、俺が判断してやっていくようだと、今後のことを考えると自分の首を締めることになるからそうしただけなのだが。
まぁ、喜んでいるし、問題はあるまい。
「まてぇい!」
そこにいきなり割り込んできた人物がいる。
もちろん、シヴィラである。
「あたいも、この国の王と繋がりがあるぜぃ! なんなら、紹介してやってもいいんだけどなっ」
含みを持たせてはいるが、なんらかの見返りを求めてそういったのはバレバレである。
もちろん俺の答えは決まっている。
「お前の裏ルートなんぞ、危なすぎてつかえるか」
言下に却下してやった。
その上で付け加える。
「言っとくが、交渉にお前は連れて行かんぞ。おとなしく宿にいるか、それともどこかに消えてくれてもかまわん」
俺は本音を包み隠さずに言ってやる。
「はぁ? あたいのことを好きにしてやる、とか言って完全支配したのはあんたじゃないか。今更、それはないよ。いたいけな美少女をもて遊んで、いらなくなったらポイ捨てなんて、あんた鬼だよっ!」
シヴィラは通りの真ん中で、そんな事を喚き始めた。
くそっ、俺はとんでもない女を支配してしまったようだ。
俺は、急いでシヴィラの口を右手で塞ぐ。
「わかった。連れて行ってやるから、とりあえず喚くのをやめろ」
シヴィラの耳元に口を寄せて小声で話すと頷いた。
それを確認して右手を話すと、シヴィラはやたらと嬉しそうな笑みを浮かべていて、俺は思わず殴りたくなってしまった。
もちろん、通りの真ん中でそんなことをしたりはしない。
そんなことして恥をかくのは俺だからだ。
「おいっしぃ朝ごはんたっべたいなぁ。アッさご飯♪ アッさご飯♪」
シヴィラは調子に乗って、楽しそうに鼻歌まじりにスキップを始めた。




