一章 使徒26 - 真実
異世界クラフト 一章 使徒26 - 真実
「それでは、話てくれないか? なんの目的で、この街にこようとしていた?」
俺の質問に対して、シヴィラは口をつぐもうとしたのだが。
そんなものは、無駄な努力というものである。
「なんの目的で来たのか話せ」
俺が命じると、
「今夜、この街を消滅させるように、依頼を受けた」
シヴィラの口から出たのは、とんでもない情報だった。
「ほう、それは誰からの依頼だ?」
当然、俺はそう質問する。
「アヴァルランド王国国王ネリフ・ハズ・カルフ三世からの依頼だ」
俺はそれが誰なのか知らないので、リィートに向かって誰のことだ、という視線を送ると。
「いまいるこの国が、アヴァルランド王国です。つまり、この街の住人にとってネリフ・ハズ・カルフ三世が国王ということになります」
これは、どうやら結構ヘビーな展開になってきてしまったようだ。
めんどくさい展開になりそうなので、聞かない方がよかったのかもしれないが。
シヴィラを支配下においてしまった後では、もはや後の祭りだろう。
とはいえ、今後やりたいことを考えると、どのみち政治にはかかわらないわけにはいかないので、これがいい機会かもしれない。
「なぜ、国王が、自国の街を消滅させる必要がある?」
俺が重ねて尋ねると、シヴィラはもう観念したのか抵抗するそぶりすら見せずに話し始める。
「今、この街に戦争反対派の元老院が滞在している。好戦派のネリフ国王は、元老院を始末すると同時に、隣国タイズランド公国による攻撃と決めつけて軍事侵攻の口実にするつもりだ」
戦端を開くときの理由付けにするために、自作自演を行うのはむしろ常套手段と言えた。
どこの国も、戦争するためにおいては大義名分というものが必要となるからである。
ただ、そのために利用されるほうとしては、たまったものではないが。
なんにしても、今はこのくらいわかれば十分だろう。
それに、ちょうど料理が運ばれてきた。
「よし、それでは食べようか?」
俺が、二人の美女に水を向けると。
「ありがとうございます、ハジメさま。いただきます」
リィートは感謝の言葉を口にして、料理を食べ始める。
「ふん。あたいも、食べてやるよ」
シヴィラは、支配された者とは到底思えない横柄さで食べ始めた。
そして俺は、なんだかんだ言っても美女二人に挟まれた楽しみを体感しながら、料理の皿を手にとって食べ始めた。
<一章 使徒 了>




