一章 使徒25 - 食堂
異世界クラフト 一章 使徒25 - 食堂
“呉服屋のぞみ”を出る前に、美味しい料理を出す店とおすすめの料理をラン・コットに聞いておいたから迷うことはなかった。
店は想像以上に広く、けっこうな数の客がいた。
文明に慣れきった俺からみたら、店内といえどけっこうな暗さであったが、それでも外よりはマシであった。
俺は店の奥に開いているテーブルを見つけて、三人でそのテーブルについた。
するとすぐにリィートが店員を呼んで、ラン・コットから予め聞いていた料理を三人分注文する。
店員が行ってしまったあと、俺はようやく黙らせておいたシヴィラの口を開放してやった。
「あんた、あたいに何をしたんだ?」
まぁ、最初にくるであろうな、と思われる質問がきた。
これから先、長い付き合いになることは確実なので、俺は丁寧に説明をすることにやぶさかではない。
「今、シヴィラという存在は、俺の支配下に置かれている。よって俺の命じたことは、全て無条件で従い続ける。ただし、命じないことに関しては、今までとなんら変わらんがな」
シヴィラはリィートとはまったく違う。
リィートは俺の所有物となることで、使徒となった。
だが、シヴィラはただたんに支配しただけで、所有物というわけではない。
俺が命じないことに関しては、これまでと何一つ変わっていないのだ。
「てめぇ。魔族の王女であるこのあたいに、なんて真似すんだ。こんなことをして、ただですむと思ってんのかよ?」
完全支配されていても、シヴィラは相変わらずの強気である。
俺としては、そこが実に楽しい。
「ほう? ただですまなければ、どうするつもりだ?」
俺は意地悪く訪ねてみる。
「そ、それは……」
シヴィラは返答に窮して言葉がでなくなってしまった。
おそらく、いままで戦った相手に一度も負けたことなどなかったはずだ。
あの駄々っ子のような負けっぷりを見てみれば、それは明らかだろう。
しかも、ただ負けただけでなく、手も足も出ない状態で負けている。
ここで、さらにリィートがさらっと追い打ちをかけた。
「あなたは、使徒にしか過ぎないわたしに負けたのです。我が主であるハジメさまと戦って、どうにかなると思いますか?」
たぶん、その言葉が決め手となったのであろう。
「ぐぬぬぬ……」
シヴィラはぐうの音も出ない状況になってしまった。
とりあえず、お遊びはここまでにして、俺は本題に入ることにする。
シヴィラがここに来ようとしたその目的を話してもらう。




