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異世界クラフト  作者: ぢたま
一章 使徒
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一章 使徒23 - 核融合

異世界クラフト 一章 使徒23 - 核融合


 つまり『ハイドロゲン・バースト』とは原理的に水素爆弾そのものであった。

 そんなものがこの位置で爆発すれば、俺とリィートはともかくとして、ここから四キロしか離れていない街は確実に消滅する。

 仮に建物が残ったとしても、中性子線の直撃をうけてすべての生命体は死滅するだろう。

 こいつは、とんでもない魔法を使う。

 歩く災厄とはよく言ったものである。

 もちろん、そんなはた迷惑な状況を見過ごせるわけがない。

 なにしろ、この後食事をしなくてはならないのだ。

 とはいっても、たとえ最悪の状況になったとしても、俺は状況をリセットできる。

 なので、リィートがいかなる対応を取るのか見ていることに決めていた。

 リィートは慌てず前に出ると、核融合のコアとなる輝く球体を両手の間に挟み込むと、それを一気に押し込んで押しつぶしてしまう。

 両手の間から幾筋かの光が漏れて、その光を浴びた地面の土が溶岩へと変わった。

 その後、すぐに光はおさまり、リィートが両手を開くと白い煙が立ち昇った。

 核融合反応を、両手を使って握りつぶしたのである。


「リィート、グッジョブ」


 俺は、親指を立ててリィートにエールを送った。

 すると、リィートも親指をたてて返してきた。

 それで、シヴィラの方をみると、かなりヘロヘロになっている様子だった。

 足元がふらついて、立っているだけでもやっとの様子だ。

 核融合を起こすためのコアにするためには、核分裂に匹敵するようなエネルギーが必要となるはずで、さすがに魔族のプリンセスといえどもほぼ全ての魔力を使いってしまったのだろう。

 もちろん、自分の作り出した核融合反応から身を守るためのシールドにも相当の魔力が必要なはずである。

 なので、当然余力など残っているはずがない。

 どう考えても、シヴィラにこれ以上の戦闘継続は無理だった。

 この時点で誰の目から見ても、勝負はほぼ確定したと映るはずだ。

 とはいっても、最初から勝敗結果は一つしかなかったことも事実である。

 リィートがふらふらになっているシヴィラに向かって歩いていく。

 すると、シヴィラはマジック・ワンドを捨ててマジック・レイピアを両手で構える。

 もうそれが通用しないことはわかっているはずなのに、諦める気はないようだ。

 斬りかかってくるが、もうその攻撃は見る影もないくらい遅く弱々しい剣戟であった。

 リィートは受ける必要もなく軽く避けただけだ。

 派手に空振りをしたシヴィラは足がもつれて、その場に倒れる。


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