一章 使徒21 - シヴィラとの対峙
異世界クラフト 一章 使徒21 - シヴィラとの対峙
俺は内心ほっとしながら言う。
「魔族のプリンセス・シヴィラだと承知している。お前さんがなんの用事があるかは知らないが、街に入れば確実に騒ぎになる。俺とリィートは今からゆっくりと食事をしたい。だから、あんたの意思は関係ない。強制的に静かにさせてもらうか、素直に引っ返してもらうかのどちらかだ」
はっきり言って、このセリフは喧嘩を売っているようなものであった。
「あたいに、喧嘩うってんのか? 後悔すんぞ、こら!」
シヴィラはほとんどヤンキーめいたセリフ吐いてくれた。
そのことは気になったが、これで、この後の展開はほぼ予想されたような流れになってくれるだろう。
「喧嘩売っているのかという質問にはイエスと言っておこう。だが、後悔するつもりで喧嘩を売るやつはいないと思うがどうだろう?」
俺はダメ押し的にさらなる燃料を追加しておく。
「もういい。あんたは、ぶっ殺す」
声が低くなり、その体から巨大な魔力が吹き出すのが感じられた。
この時点で俺の戦闘モードはすでに発動していて、時間の流れはゆっくりになっていたが俺はあえて動かない。
俺には非常に待ち長い時間であったが、実時間では極めて短い呪文詠唱が行われ、目の前の空間に魔法陣が形成される。
俺の視界には魔法陣の説明が表示されており、どういったものかは理解できている。
シヴィラが使用した魔法はダーク・ボルト。
魔法陣から破壊力のある魔光を放ち、対象を攻撃する。
特徴としてはホーミング性をもっているために、回避してもある程度は追尾するという特徴があった。
ただし破壊力としてはそれほど高くなく、人間一人を倒すには十分だが、グリフィンのような大型のモンスターを倒すまでには至らない。
もちろん、その程度の直撃を受けたところで、俺にとっては痛くも痒くもない。
だが、俺があえて動かなかった理由は別にある。
「あなたの相手は、わたしがします」
俺とシヴィラの間に立ち、魔光を片手で受け止めながら、リィートが美しい顔をシヴィラに向けて冷ややかに言った。
「はぁ? 邪魔すんじゃないよ!」
割って入ったリィートに向かってシヴィラがいうが、若干同様している感じが伝わってくる。
おそらくは、リィートの動きが見えなかったのだろう。
俺の力の一部を使えるリィートもまた、自動的に戦闘モードに移行している。
俺ほどではないにせよ、時間の流れをある程度制御できるのだ。




