一章 使徒19 - 魔族の王女
異世界クラフト 一章 使徒19 - 魔族の王女
現地の住人であるリィートの反応を見て、俺の対応も決めればいい。
「シヴィラという名には聞き覚えがあるか? どうやら、魔族の王女のようなのだが?」
いたって普通の感じでリィートに告げると。
「知っているもなにも、世界中で彼女の名前を知らない存在はいないでしょう。人間もエルフもドワーフも、そして魔族も……。彼女は、歩く災厄と呼ばれています」
驚いたようにそう話して、さらに付け加える。
「それでは、この感覚は彼女の発する魔波動ですね。今、どこにいるかおわかりになられますか?」
その質問に、俺はマーカーの表示されている方向を指で指し示して告げる。
「この先、四キロほどの場所だ。歩いているらしく、それほど速度は早くない」
俺が応えると。
「まだ距離はあるようですが、食事中に街中に入ってこられると厄介ですね。できれば、今のうちに対処したほうがよろしいかと思いますが、いかがでしょうか?」
リィートがそんな提案をしてきた。
ちょうど、俺もそう考えたところなので、当然それに賛意を示す。
「わかった。ちょうど、リィートが使徒となった初戦の肩慣らしの相手が欲しかったところだ。食事前の腹ごなしとしてうってつけだろう。ただし、殺すなよ? 場合によっては利用価値があるかもしれんからな」
当然のことながら、場合というのは美人かどうかを指している。
リィートのように使徒にするつもりはないが、俺かリィートの支配下には置くかもしれない。
もちろんそういった判断は、実物を見てから下すつもりだった。
俺はリィートを連れて、目標から百メートルほど離れた場所に転移する。
この場所は完全に郊外となっているので、真っ暗だった。
裸眼だとほとんど何も見えない。
なので、すぐに暗視モードに切り替える。
視界が昼間と同じくらいにまで開けた。
今の俺は、星の光の光量だけで、昼間と同様に見ることができる。
「派手な格好をした女が歩いているな。あれがシヴィラのようだが、見えるか?」
俺がリィートに確認するように尋ねると。
「はい、ハジメさま。服装まではっきりと確認することはできませんが、確かに女が一人で歩いてきているようです」
さすがにハイ・エルフ。この暗がりの中でも、視界は確保できてるようだ。
「それで十分だ。では、戦闘前に伝えておくことがある。俺を見ろ」




