一章 使徒18 - 魔波動
異世界クラフト 一章 使徒18 - 魔波動
「ああ、そうさてせもらう。着ていた服は、宿の方に届けておいてくれ」
俺が言うと、ラン・コットは頭を下げる。
「承知いたしました。それでは、サトウ様のお服はいかがいたしまょう?」
俺は、通りで見かけた一般的な感じの服を選らんでいた。
「ああ、俺はこれにする。俺の服も宿に届けておいてくれ」
俺はすぐに着替えて、ラン・コットに別れを告げて外に出る。
「それでは、またのお越しを心よりお待ちしております」
店の外にでて、ラン・コットは丁寧に頭を下げていた。
俺は今、道行く男が振り向いていくような、美しい女と一緒に歩いている。
この状況は実に誇らしい思いを味わうことができたのだが。
「どうした?」
リィートの様子がおかしいことに気づく。
「わかりません。ですが、何かおかしいです」
非常にざっくりとした答えが返ってきた。
もちろん俺は、それを気のせいだと聞き流すつもりはない。
ハイ・エルフというのは、この惑星において人とは違う歴史を刻んできた種族である。
高度な魔法文明を太古に築いたこともある。
今では、その時代は伝説となっているが、俺はそのことをデータとして知っている。
その中で洗練された力は血となって、リィートの中に存在している。
そして、人とは違って森の中に生きることにより、その感覚はむしろ研ぎ澄まされてきていた。
そのリィートが、何かがおかしいと感じているのだ。無視するべきではないだろう。
というのが俺の判断であった。
すぐに、俺は周囲十キロ四方のマップを開き、危険対象をサーチにかける。
さすがに街中ということもあって、多数のマーカーが表示されるが、郊外に他とは違うマーカーが存在していることに気づいた。
他のマーカーより大きめで、赤色く点滅している。
他の危険度よりも、かなり高くなっていることを示しているのだ。
概要を表示すると『エビル・プリンセス』と表示される。
固有名詞としてシヴィラと表示されて、種族は魔族となっていた。
どうも魔族の王女ということらしいのだが、俺にはどうにもピンとこない。
この世界にきて間もない俺としては、データとしての認識はできていても、魔族とかいうものが具体的にどういう存在なのかがわかっていないからだ。
それは、リィートとこうして共に行動するまで、エルフというものがどんなものなのか理解できていなかったことと同様である。
なので、俺はそのことをさっさとリィートに伝えてしまうことにする。




