一章 使徒17 - チョイス
異世界クラフト 一章 使徒17 - チョイス
そう指摘すると。
「ハジメさま……いえ、我が主よ。貴方様の使徒となれたことを、心より幸せに想います」
リィートは従順に頭を垂れた。
正直悪い気はしなかったが、ここにはラン・コットがいる。そして、ラン・コットは明らかに奇異の目でこっちを見ていた。
それはそうだろうと俺も思う。
なので。
「ラン・コット君。リィートに一番合う服を選んでくれないか? 俺は適当にそこらの服を見ているから」
俺は商談を進めた。
「はい、賜りました。この店で一番のお服をご覧にいれましょう」
それから数分後、リィートは山盛りの感じになって登場してきた。
どこからどう見ても、中世欧州の貴婦人である。
正直、こういうものは想像していなかった。
はっきり言って、こんなのと一緒に歩きたくはない。
リィートを見ていた俺は、よっぽど渋い顔をしていたのだろう。
「ハジメさま。これは、どうにも動きずらいです。できれば他の服も見せていただきたいのですが?」
気をきかせて、そんなことを言ってきてくれた。
好きな服を選べと言った手前、どうしたものかと思っていたので、この提案は非常にありがたかった。
「そうだな。できれば歩きまわるのに支障なく、それでいてリィートの美しさを最も表現できる、薄手の服がいいな。それに、他のデザインのものはまた買いにくればいい」
俺は今度はある程度注文をつけておく。時間の問題もあったが、リィートに余計な気を使わせなくてすむからだ。
「承知いたしました。それでは、その方面で選びなおしてみましょう」
ラン・コットはなんの問題もないという感じで、リィートと一緒に店の奥に引っ込んでいった。
そして、それからまた数分してでてきたとき、リィートが身につけていた服は、イブニングドレス風の大胆にデザインされたものになっていた。
現代日本のデザインと見比べたら、野暮ったい気もするが、さすがにそこまで求めるのは贅沢というものだろう。
使える繊維素材も染料も、そしてデザイナーもまるで違うのだから。
やはり、何をするにしても、産業革命は急務だと改めて認識する。
「いいな。その服、俺は気に入った。それで、リィートはどうだ?」
返事はわかっているが、俺はあえて聞いておく。
「はい、わたしも気に入りました」
俺が質問したときの定形となるような答えであったが、その表情を見る限り問題はなさそうだ。
「それでは、このまま帰られますか?」
ラン・コットが聞いてきたので、俺は頷いた。




