トイレの守護神
話は再びかぐやと出会った頃に遡る。
朝食も済み、そろそろ出社の準備にとりかかろうとする時間である。
ふぅと一息つき腰を下ろした私は、いつもなら何故かホッとするトイレ個室でぎょっとした。我が家のトイレにはトイレットペーパーや掃除用具が収納できる棚があり、その上には花が飾ってあったりするのだけれど、そこにかぐやの姿を見てしまったのだ。
えっと、偶々入り込んでただけよね・・・。そう思い込みながらもなんとなく落ち着かなかったのである。
翌日、再びトイレに入った私は驚かされることになる。
今度は棚の上にかぐやはいなかった・・・が、便座の細いところに座り込んでやけに真剣そうな顔をしている!って、ちゃんとトイレの意味わかってたんですね、相手は猫だ、猫なんだけど恥ずかしい。とか考えていたら、かぐやはバランスを崩してトイレに落ちてしまった。大暴れしたのと、救い上げた後ブルブルッと水気をとろうとしたため、私も全身びしょぬれになってしまった(涙)
なんとなく馬鹿らしくなった私は、開き直って
「所長、午前半休を頂けませんか」
と電話で尋ねた。一瞬の間が空いた後、
「午後から出るんだね、気をつけなさい。」
とのこと。あははー、どういう意味でしょう?
応急処置程度に掃除をして、濡れ鼠になったかぐやをつまみあげて風呂場へと向かう。私はお風呂に入り、カグヤは湯桶に放り込む。
「このいたずらっこめ」
私はクスクス笑いながら、小さい額にデコピンする。
フーなんて威嚇しててもかわいい。
嫌がるカグヤを無理やり全身洗って、珍しくお昼を一緒に食べた後、ゆっくりと、でも遅れないように出社した。
この日、同僚達が、
「なんか今日、表情が柔らかいよね」
「険のある表情だと思ってたんだがそうでもないのか?」
「後でお茶してみる?」
などと会話していたのだが、彼女らが仲良くなるのはもう少し後の話である。




