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僕のできること

 僕が彼女と暮らし始めてから、彼女は僕を[かぐや]と呼ぶ。

と言っても、最初からそれが何を意味しているのかわかったわけではない。今考えてみればおかしいとわかるのだが、彼女は僕の名前を呼びながら、自ら僕のほうにやってきて抱えあげると嬉しそうに微笑みながら時に撫でたり、時に篭にのっけたり。

よくわからなかったけど、そもそも[嬉しい]とか感情を理解したのが最近のことなのだが、彼女が僕を呼ぶときは何故か嬉しそうで、やはりなぜだか僕も嬉しくなってしまうので[かぐや]と呼ばれると僕は彼女の元へ行くようになっていた。もっとも最初は母音の聞き取りしかできなくて、電話で「・・・昨夜・・・・」なんて言っていても呼ばれたのかと思っていたのだが。

 でも実は[かぐや]が自分の名前だと気づいたのは大分後のことだった。他の猫は[猫]、僕は[かぐや]。理解するのが大変だったけれど、自分の名前があるのはいいことだ。そしてその名前を呼んでくれる相手がいるというのはもっといいことだともう。

僕は呼べないけど。

 僕は気づいていなかったけど、彼女が僕の名前を呼ぶときはいつも笑っていた。何がそんなにおかしいのかわからなかったけれど、偶々彼女が[何か白い服]を抱いて泣いているのを見たことがあった。

何が悲しかったのかは今でもわからないが、彼女は僕の前では笑っていようとするのだと気づいたので、僕は、彼女が呼ばないときほど近くにいようと思ったのだ。にゃあにゃあしか言えない僕にできること。

 

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