あなたのお名前にゃんですか?
かぐやと一緒に住むようになって幾月か経った頃、私はあれ?と思った。かぐや~と呼んだとき、彼がこちらを向いていることが多い気がしたのだ。私は試しに隣の部屋に行き、かぐやーと呼んでみた。するとかぐやはするすると近寄ってくると私のほうに顔を向けてきた。[かぐや]が自分のことだってわかってる?私はふと思索の海に飛び込んでいた。呼ばれるなり放置されて不振に思ったのか、彼が私の足にタシタシする。
別に用も無く呼んでしまった私は、彼を抱き上げてもとの部屋に戻ると近くにある量りにちっちゃな篭をのっけて彼をちょこんと乗せてやる。はっきり言って、私は思索にふけっていて、これらの行動はその片手間に行っている。上下にゆれる量りの台と振れる針が気になるのだろう、彼は身を乗り出してころりと転げ落ちる。初めて連れ帰ったときに比べて重たくなったなぁと考えつつ、そういえば彼は、片目が発育不良なせいか、物音に大して過敏なようで、今まで見た猫より頻繁に耳を動かしているようなきがする。篭から転げ出た彼をつまみ上げ、再び篭にのっけてやる。のっけてやっては転げ落ちる様子を見る限りでは他の猫と変わらないような気がするのだけれど。私が現実に意識を戻すと、彼は飽きたのかどこかへ行ってしまっていた。今は考えてもわかりそうにないなと思い、観察用の手帳に体重やら様子、疑問点を記す。
手帳のタイトルは[かぐやの日々是ワンダフルライフ]だった。
ネーミングセンスはイマイチの主だった。




